カレッジマネジメント196号
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23たが、現在はこの環境を生かした質の高い教育を提供し、200~250名ほどの学生が学んでいる。英語コミュニケーション学科とグローバルビジネス学部の学生は、2年次に最低1セメスターはボストンで学ぶことが必須となっているが、昭和ボストンをステップにアメリカの他大学に留学する等意欲的な学生もいる。ほかの学科の学生も、昭和ボストンで、サマープログラムはもちろん、1セメスター授業を受けることができる。例えば、管理栄養士で英語もできる等、専門技能にプラスアルファで英語を使いこなせる学生が出てほしいという。またアジア方面では、上海交通大学と22年間の協定関係にあり、最近は国際学科でダブルディグリープログラムも動き出し、現在8名の学生が履修している。もうすぐソウル女子大学、ベトナム国家大学等とも同様の取り組みを始める予定だという。時代と学生に合わせた丁寧な改革で潮流を創り出すこうした取り組みの効果は、明らかに就職率に表れている。2015年度の就職率は93.9%。5年連続で全国女子大第1位である。これまでの取り組みに加えて、夏休み前に就職先が決まらないと心理的なダメージを受ける学生が多いが、それを励まし、もう一度チャレンジさせる等、職員の努力も大きい。2014年度の個別面談実績は3855件に上るが、内定が決まる最後までこれほど丁寧に面倒をみている大学は少ないのではないだろうか。昭和女子大学では、国立大学並みの教員学生比率であることに加えて、1年次から各学科にクラスアドバイザーを置いており、教員と学生の距離が近く面倒見が良いことも背景にあるようだ。取り組みの効果の測定はこれからの課題だが、学生達が意欲的になっているという実感はあるという。確かに本当の意味での取り組みの成果は、卒業生達がしなやかに仕事と家庭を両立させ、幸せな人生を歩むことであって、10年後、20年後と長いスパンで出てくるものであろう。学生達だけでなく、最近の昭和女子大学は外から見たイメージも大きく変わった。坂東学長が昭和女子大学にきて12年(学長着任から9年)、行ってきた改革や、教職員が時代の変化に合わせて努力してきた成果が表れつつある。例えば、教員の採用は全て公募・任期付きに変えた。大きな私大でここまで思い切った取り組みをしている例はほとんどないが、多様な背景を持つ方が応募してくれるようになったという。職員も中途採用を中心に切り替えた。ほかの分野で仕事をしたうえで職場として大学を選ぶ人は、相対的に見て意欲が高い傾向があるという。こうした新しいチャレンジに軋轢はつきものだが、変わる意識のある人から変わってもらい、メンター、現代ビジネス研究所等、外部から新しいインパクトを入れ、新しい考えを持った教職員に来てもらうことで、時間はかかるが、確実に学内の雰囲気は変わってきた。キャリア教育について今後の課題を尋ねると、「これまでは自前で作ってきたが、今後は外部機関との連携も進めたい。パートナーとして選んでもらうためにも実力をつけ、個性をさらに際立たせることが重要だと考えています」とのこと。昭和女子大学のさらなる発展も楽しみであるが、男性も女性も活躍できる社会を作るためには、女子学生にこうした教育をしていくだけでなく、男子学生にも同様の教育が不可欠だ。願わくは、昭和女子大学の取り組みが、ほかの多くの大学にも大きなインパクトを与えてほしいものである。リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016(両角亜希子 東京大学大学院教育学研究科准教授)図表3 志願者数推移0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 学部別(人) (人) (年)学校全体0 2000 4000 6000 8000 学校全体グローバルビジネス 人間文化 人間社会 生活科学 特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ

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