カレッジマネジメント196号
32/60

32リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016レンジに到達してしまう。欧州と比すれば、「階層を上りつめる」キャリアといえよう。このキャリア構造の違いが、日本社会では、働く人にも使用者にも心の中にインプットされている。平たく言えば、こんな感じだ。「給与は上がって当たり前。役職は上がって当たり前」、「入った時と同じ仕事をしてもらっていては困る。経験相応の難易度は上げる」。こんな「上がって当たり前」という常識が労使双方にある中で、「入口のスキル」では採否は決められない。だから、単純に欧州型職業教育を日本に持ち込むことは難しい。G(グローバル)型大学は必要だが、ほんの少しで十分昨年より、大学をG(グローバル)型とL(ローカル)型の2パターンに分けての議論が盛り上がっており、大学改革では、グローバルな高度人材育成を旨にすべき、という話もよく聞く。それが学術研究分野の話であれば、私は知見がないので何も言うことはない。そうではなく、産業に資する人材というのであれば、大いに異見をぶつけたい。確かにそんな高度人材は必要だ。ただ、それはほんの少数である。欧米のすごいところは、「国民全員グローバルで高度化」などとはゆめゆめ語らず、ほんの少数の超エリートを英才教育する仕組みを作っていることだ。その現実に気づくべきだろう。例えば、アメリカの超一流大学といえば、スタンフォードやMIT、ハーバード、プリンストン、イェール等の大学名が頭に浮かぶだろう。このほかにも、各地域にトップクラスの私立大学がある。一流校の名前を並べるだけで、20校程度になってしまうだろう。それだけあるから、日本人は、「きっと、MARCHか関関同立くらいの感じだろうか」と考えてしまう。これこそ、冗談はよしてくれ、なのだ。先に挙げた超名門5校の入学定員を図表5にしてみた。各校1100~1600名程度であり、5校合わせて6945名。その数は慶應義塾大学1校程度であり、早稲田大学の3分の2でしかない。その他合わせて20校になるといっても、学年定員は2万人ちょっとだろう。あちらの大学生数は200万人を超える。つまり、上位1%の世界なのだ。同じ比率で言えば、日本なら東京大学と京都大学を足した程度の卒業生だろう。これが現実なのだ。この少数者が、とてつもなく高い授業料を払い、さらにそれだけ希少人材だから、企業も潤沢に寄付をする。だから、濃い実践教育ができる。1校で5000名も1万名もいる日本の大学ではとても無理なのだ。グローバル人材のニーズは実際にどの程度あるか産業界の側からも考えておこう。グローバルなハイパーエリートを、企業は果たしてどのくらいの数必要としているのか。 実際、考えてみよう。例えば、グローバリゼーションの波がとりわけきつく押し寄せるといわれる金融業界で、本当にグローバルな仕事をしている人はどれくらいいるか。信用組合や信用金庫にはほぼいないだろう。地銀や第二地銀にも少ない。農協やゆうちょ銀行でも、中央に学部生1学年スタンフォード66001650ハーバード66001650MIT44801120イェール53001325プリンストン480012005大学合計277806945非公認他公認180校上位20校学生数680003710060001校あたり206300※どの大学も3~7校の合併でできているため、実際はより細分化され、200~300名単位の学校となる。図表5 欧米の名門校の規模アメリカのエリート大学フランスのグランゼコール

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 32

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です