カレッジマネジメント196号
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35リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016らでも題材は探せるだろう。今のままの学部構成で、授業を少し変え、厳しさを格段にあげる。それだけで、日本型企業に役立つ仕組みとなっていく。出席を厳しくとり、授業中の私語やスマホや居眠りは許さず、遅刻をしたらきちんと理由を説明したうえで頭を下げ…。こんな授業にすれば、5)の社会適応力も高まる。時間にルーズで、マナーに欠けていたら社会では通用しない。それも大学の授業を通して徹底的に教え込めばいい。社会に出たら、経済も法律も文学も、仕事の中でほとんど使う場面はない。だが、学問を通して身につけた「話す・聞く・考える・理解する・耐える・続ける」と言った力は、永遠に重宝するはずだ。企業が必要なのは、パソコンに例えるならば、入口用のスキルというチープな“アプリケーション”ではなく、永遠に通用する“OSの厚み”なのだ(図表7)。ドイツでは、大学を卒業した人も、大学に行かずにデュアルシステムという職業訓練体系に進んだ人も、どちらも修了した暁には、社会は温かく彼らを迎える。なぜか。それはどちらもとても厳しい仕組みで、そこを耐え進んだ若者達は、社会の荒波にもまれる力をつけたとみなされるからだ。それと同じだろう。今のままで「厳しく鍛える」ことが日本型の「学ぶ」と「働く」の接続となる気づかないか。欧州の階層社会は、上にも横にも閉じて、一生同じ仕事をする。その賽の目構造に合うように教育も進化してきた。日本の「上に向かう」社会では、企業は全人格的な能力を重視する。だからこそ、全人格形成ができるアカデミズムが大学の基本になった。つまり社会相応に、経路依存的に教育も構成されているのだ。要は少子化→全入時代で、それが「学生に甘く」なりすぎていることが問題なだけだ。だからこそ、襟を正し、改めて厳しく学生を鍛える教育を行う。それで、今の社会にマッチした大学に十分変われるのではないか。法/政治 経/商/経営 文/教育 理工/農 医/薬/衛生 図表7 現状のまま「厳しく鍛える」ことで身につく力 教授・研究員による 厳しい審査・指摘 締め切り厳守 離脱者は単位なし 忍耐力・継続力・思考力・咀嚼力・説明力 協調性 社会適応力 基礎学力 企業の ニーズ 現状の 学部構成 ※欧米のAOは この形 ①課題による訓練 ②協働による訓練 ③態度への指導 ④「①②」のための 基礎学力強化 授業に即したレポート プレゼンテーション 共同発表・ PBL 学部別 リメディアル 厳しい 出欠管理 態度・マナー での評価 修正、再提出 忍耐・継続・論理・提案力 協調性・集団性 特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ
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