カレッジマネジメント196号
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36リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 20162010年度、文部科学省は大学設置基準を改正し、キャリア教育を正課の授業として取り組むよう、各大学で教育課程等の見直しが始まった。この改正に盛り込まれた「社会的及び職業的自立を図るために必要な能力」が「就業力」である。【大学設置基準の改正】2010年4月 大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒尊後自らの能力を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。この改正を踏まえて本誌では、2010年7月に、(株)リアセックキャリア総合研究所と共同で全国の大学732校の学長を対象とする「就業力育成に関する学長調査」を実施し、分析を行った。有効回収率65.8%は、関心の高さを示す数字だった(2010年11月号/165号)。大学におけるキャリア教育を事実上義務化した設置基準改正・教育課程の変更についての賛否を問うと、8割強と大多数が賛成であった。また、学長が考える「特に重要な対策」のベスト3は以下の通りだった(図表1)。①学生の就業観、勤労観の育成(50.0%)②初年次教育の強化(28.2%)③キャリアセンターの強化(28.0%)「内定を獲る力」支援から「学生のキャリア自立・自律」支援へ文部科学省はこの改正を推進する事業を次々と展開した。2010年度には「大学生の就業力育成支援事業」が2014年度までの5カ年を予定して開始。これが2011年11月の行政刷新会議の「事業仕分け(再仕分け)」により、2011年度限りで廃止されると、それを引き継ぐような形で2012年度〜2014年度(3カ年)「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」が実施された。類似の取組は、文部科学省、厚生労働省、経済産業省及び内閣府の関係4府省が教育・雇用・産業政策の連携強化等による総合的な人材対策として2003年に取りまとめた「若者自立・挑戦プラン」(キャリア教育総合計画)に遡ることができる。当時からこの課題に取り組んできた先駆的な大学もあるが、多くは、2010年の大学設置基準改正、そして文部科学省の関連施策を契機として、就業力育成の取り組みを活発化させてきた。「就業力」への注目の始まり角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長連載を振り返る図表1 今後、就業力育成で特に重要な対策(複数回答) 0 20 40 60(%) 卒業後3~5年以内のOB・OGとの関係強化 学生支援課(組織)の強化 地元企業との連携強化 一般教育(カリキュラム)の見直し インターンシップの強化 就職相談、カウンセリングの強化 現在いる教員の教育力向上 キャリアセンターの強化 初年次教育の強化 学生の就業観、勤労観の育成 50.0 28.2 28.0 27.0 20.1 14.9 14.3 10.8 10.8 10.4 就業力を育成する最終回

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