カレッジマネジメント196号
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39リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016ローバル化社会への対応である。基本は語学教育の強化・見直しだが、それにより輩出するグローバル人材のイメージは、「グローバル企業に就職して海外で働く」という比較的分かりやすい従来イメージから、「日本国内で働いていても、地域や職場で外国人と接するのが当たり前」という時代の環境に対応する人材イメージまで、各大学の特性に応じて様々であった。改革の継続性についても多くの意見が聞かれた。「産業界のニーズ〜」事業等、文部科学省GP事業は多くが5年程度の期限付きで予算のつく事業である。事業の終了後に「補助金の切れ目が改革の切れ目」としないことが課題となる。大学の独自予算をあてる、通常の予算で運営できるカリキュラムに組み込む、企業等の連携先にメリットを示すことで継続的な支援を得る等、各大学とも知恵を絞っている。また、「学生を大学の主役に」という趣旨の発言が複数の学長からあったことも印象深い。例えば三重大学の内田淳正学長(連載第19回 2014年9月号/188号)は、「大学は本来、教員が教え育てる教育の場ではなく、学生が学び問う学問の場」と言い、変わりにくい教員・職員の意識変革にも学生のパワーに期待するところ大と述べている。「就職対策」から「正課内外を通じた人材育成」へ大学における就業力育成の必要性が強く意識された背景には、2000年以降の就職環境の厳しさがあった。特に「大学生の就業力育成支援事業」が始まった2010年は、リーマンショックの2008年に就職活動をした学生の卒業年であったことから、就職(内定)率向上を急務と感じていた大学にとって「就業力育成」は、就職対策の意味合いが強い取り組みとしてスタートした。大学の機能分化が進む中で、現在就業力育成やキャリア教育を意識した取り組みを何ら手がけていない大学は皆無だろう。その意味で、就業力育成を切り口とした大学改革は確実に進んできたといえそうだ。2013年頃からは、景気の回復とともに就職環境が好転、加えて、いっそうの少子化=若年者人口の減少が顕著になり、新卒人材の希少価値は増大している。一方で、産業経済の変化はますます速くなり、グローバル化も同時に進んでいる。これらの状況から、内定を獲得する能力の育成・支援よりも、学生のキャリアの自立・自律、そしてそのための能力開発と大学教育が注目されるようになってきた(例えば、21世紀型能力の開発等)。実はこれは、大学設置基準の改正の意図に近づく動きのように思える。即ち、3つのポリシー(AP、CP、DP)を明確にし、正課内・正課外の活動を通じて学生のキャリア自律(=社会的及び職業的自立を図るために必要な能力)を育成するのが大学教育の果たすべき役割である(図表3)。新たなテーマは「キャリア自律」(大学と社会をつなぐ)本連載は、同じ課題に取り組む大学に有益な情報を提供するという目的は変えないままに、テーマを「就業力を育成する」から「キャリア自律を育成する」に一新する。つまり、就職支援的なものにとどまらず、学生のキャリア自律を育成するための各種の取り組み、大学教育改革を取り上げたい。正課内活動では、初年次教育や授業内容、授業方法、学習環境の改革事例、正課外活動としてはインターンシップや留学等「隠れたカリキュラム」といわれる活動に着目したい。環境の変化とともに「就業力育成」から「キャリア自律」へ、学長の意識が強まっていることを折々に感じた4年間でもあった。今後、大学と社会をつなぐ「キャリア自律」に各大学が取り組んでいる事例を積極的に紹介していきたい。図表3 大学生活と就業力育成の全体図 専門教育 ↑ ↑ 教養教育 初年次教育 正課内活動 高校生 正課外活動 Diploma Policy (Learning Outcomes)Admission Policy /選抜・AO・推薦CurriculumPolicy授業方法・学習環境 部活・サークル 留学 インターンシップ その他 就職活動・進学準備 Hidden Curriculum ポートフォリオ/ プログレスシート 特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ

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