カレッジマネジメント196号
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リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016日本の採用選考では大学の成績等の学業の成果を重視しないというのが長年の慣行となっているが、これは国際的に見ても珍しい。学業成績を重視しない背景には様々な事情があるだろう。大学の成績評価自体の精度に不満があるからかもしれないし、さらに言えば、大学のカリキュラムや教育方法に信頼感を持っていないのかもしれない。あるいは伝統的な新卒一括採用と結びついた入社後のOJTなどゼロからの育成には「真っ白で純粋無垢な人材」を企業が欲しているという事情もあるだろう。その結果、実際の採用では「大学の偏差値」と「人柄(ポテンシャル)」の大きく2つを指標に採用する傾向が長らく続いてきた。偏差値の高い大学出身者は地頭力、つまり学習能力が高く、論理的思考力があると見なす。一方、人柄はエントリーシートや面接を通じて判断してきた。しかし、そんな中でも成績表を提出させている企業もある。例えば「リクナビ2016」において、応募書類について表記している企業のうち、成績表の記載がある企業は37%となっており※、3社に1社以上は提出を求めているという状況だ。では、企業は成績表をどのように見ているのか。総合商社の採用担当者はこう語る。「成績表を提出させている理由は、ほかのクラブ活動やボランティア活動等と同様に、大学時代にどんなことをどれだけやったかを知る参考資料になるからだ。面接では成績を見ながら具体的に取り組んだ内容を聞くなど、本人の人となりを知るツールになる。受け答えを聞きながら、総合的に選考している」。また大手製薬会社の人事担当者は、成績表を学生のインプット能力の一つとして評価しているという。「大学の成績や英語のスキルレベルは見ている。何に対してどれだけ頑張ったのかという努力の結果の一つが成績評価である。しかし、こうしたインプット能力も大事だが、もっと大事なのは新しい何かを創り出すアウトプット能力であり、それは成績表では分からない。面接では何を作り上げたのか、なぜそれに取り組んだのか、その結果、自分が得たものは何かという3つの質問を繰り返していくことでアウトプット能力も確認している」。この2社においては、成績はあくまでも選考ツールの一つという位置づけだ。一方でより学業を重視する企業もある。大手ゼネコ教養教育に裏付けられた、「専門性」「行動特性」の育成と証明溝上憲文 人事・雇用ジャーナリスト大学・短期大学への進学率が半数を超え、ほとんどの学生が卒業後、社会に出て働くこととなる今、大学教育は、どのような力を学生につけて卒業させることが良いのだろうか。 “学ぶ”と“働く”の接続を考えるにあたっては、卒業後の学生を採用し、受け入れる側の企業の視点は外せない。本記事では、企業が採用時に、大学における学生の学びや経験に何を期待しているのか、評価するポイントや基準はこの数年で変化しているのかなど、複数の企業に取材する中で見えてきた最新状況をまとめた。企業の採用視点から見る、大学教育への期待※2015年10月29日時点3社に1社は、大学の成績表を見ている成績表を見る目的やポイントは、企業により異なる

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