カレッジマネジメント196号
7/60
リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016ンの採用担当者は「理系に限らず、文系学生も成績表をベースに質問し、大学の学業など専門領域を深掘りできているかどうかを見ている。専門を極めれば、ものの見方であるとか、社会や経済の底流にある物事の本質を見抜く力が養われてくるものだと思う」と指摘する。求める人材像にふさわしい基本的な資質・能力を見極める手段として成績を重視している。また、一部ではあるがビジネスの必要性から学業成果を重視する企業もある。近年は職種別採用も少なくないが、大手消費財メーカーでは通常の採用枠とは別に財務・経理、マーケティングに通じた学生を採用している。同社の人事部長は「特別枠の採用では専門の学業能力を重視し、面接でどの程度の能力があるかを確認している。欧米企業に比べて日本人の専門能力が劣っていると感じている。一定レベル専門性を確立できなければ世界で勝負できないからだ。グローバルで活躍するには若いうちから専門性を磨いていかないと、競争に負けてしまう」と、その理由を説明する。ビジネス環境の変化を受け、「専門性」「行動特性」への要求はより具体的に安定した経営の時代とは異なり、多くの企業がビジネス環境の大きな変化の波にさらされている。新たな商品・サービスを創造したりビジネスモデルを転換していくには、地頭と人柄の良い人材を採るといった従来型の選考スタイルのままではいけないとの危惧がある。そのような考え方から、専門性や行動特性をより重視した戦略採用を実施しているのが日産自動車だ。同社は10年ほど前からマーケティング&セールス、商品企画、開発・研究、経理・財務、人事等の職種別採用を実施している。さらに4年前から人材要件を明確化し、各部門の担当者が直接大学の研究室やゼミ等に足を運んで学生を獲得する「戦略採用」を展開している。そこでは専門の学業成果に加えて、洞察力やリーダーシップ等のヒューマンスキルも深くチェックする。ホームページ上で募集し、面接を経て合否を判断する従来型の選考方式も実施しているが、今では戦略採用が新卒採用数の8割を占めているという。ビジネス環境の変化や市場競争の激化を背景に、単なる「良い大学」「大学の偏差値」といった指標ではなく、成績も含めた「専門性」重視の傾向が強まっているのも確かだ。また、従来の「人柄」に対しても、抽象的な要件ではなく、自社の業態や仕事・職種に求められる人材要件をはっきりと定め、それに合致した「行動特性」を備えた学生を選ぶ傾向が強まっている。ここで言う「行動特性」とは、学生が大学までの学習や活動から身につけてきた、再現性のある能力、コンピテンシーのことである。筆者はカレッジマネジメントにおいて2008年から2012年にかけて『本当に欲しい人材』という連載記事を担当し、20の業界、60社以上の企業を対象に業界や企業が新卒人材に求める資質・能力は何かを追及してきた。その中から、企業が求める主な能力・資質をまとめたのが図表1である。採用の際、各企業はこれらの要素の中から特に重視するものを絞り込み、あるいは優先順位をつけ、その能力や資質の有無を、学生の「行動特性」を通して見極めようとしている。それらが実際の採用現場ではどのように行われているのか、次の章から見ていきたい。募集職種に即した人材かどうかを大学時代の学習を含めた経験や成果を“通して”判断アビームコンサルティングの募集職種は「コンサルタント職」。同社の人事グループ統括林崎 斉執行役員は特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ①チャレンジ精神変革する力、バイタリティ②チームワーク力共感力、チーム志向③コミュニケーション能力論理的思考、伝える力④リーダーシップ力周囲を巻き込む力、主導力⑤主体的行動力自律的アクティビスト、やりぬく力⑥グローバル素養異文化受容力、語学力図表1 企業が新卒人材に求める能力・資質カレッジマネジメント176号p.58 「本当に欲しい人材(最終回) 大学で養う6つのポテンシャル」 より
元のページ