カレッジマネジメント196号
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リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016求めているのは、就業スキルではなくチャレンジし、失敗してそれを乗り越えた骨太の経験セブン-イレブン・ジャパンも面接では学生時代の様々な経験を聞いているが、特に重視しているのは「何か一つのプロジェクトを成し遂げたというスポットの経験ではなく、4年間を通して継続的に努力し、失敗してもなぜ失敗したのかを掘り下げて考え、次の行動につなげることができたのかという点。我々の仕事においても消費者のニーズは多様であり、それに応じて自分なりに考えて提案し、地道に改善を繰り返すことがカウンセリングにおいて大事だからです」(森アシスタント総括マネジャー)と指摘する。ただし、求める行動特性を知る手がかりとなる経験を学生の誰もが積み上げているわけではない。森アシスタント総括マネジャーは「学生に求めているのは入社研修で得られるような就業スキルではない。大学時代にしかできない、軸を持った骨太の経験であり、しかも失敗してもチャレンジし続けるような連続性のある経験をしてきてほしい」と要望する。これは学生本人だけではなく、大学教育の観点からも重要な指摘だ。アビームコンサルティングの林崎執行役員も「多くの学生に会って感じるのは、失敗することを恐れているのか、チャレンジした経験を持つ人が少ないように思う。失敗の中から学ぶことのほうが多いはずですし、成功者の大多数は、多くの失敗を経験している人でしょう。大学において、チャレンジングな課題を与えるのは難しい部分はあると思いますが、可能な限りその機会を提供してほしいですし、意図的に、失敗させることも経験させてほしい。失敗を次の機会に活かしていく、そうした経験がなければ国際的なビジネス競争には勝てない。」と指摘する。人間力のベースとなる教養教育への期待も大きい両社に限らず、学業成果やその他の活動を含めた大学時代の学習成果に対する企業側の要望もある。大手鉄道会社の採用担当者は「学生時代には体系だった学問領域を徹底的に学ぶことが必要だと思う。キャリア教育を行うことも否定しないが、それは、決して小手先の就活テクニックを学ぶことではない。エントリーシートの書き方よりも、その根底にある論理的思考力や文章作成能力等の基本を徹底してほしい」と要望する。また、教養教育やリベラルアーツ教育に対する期待も大きい。セブン-イレブン・ジャパンの中田智史人事部採用担当マネジャーは「教養力が培われた学生ほどすごいなと感心することが多い。教養教育やリベラルアーツは物事を見極める視点や発想に必ず生きてくると思う。大学時代の日々の学習や経験を通してぜひ磨いてほしい」と指摘する。メガバンクの採用担当者も「教養教育は人としての倫理観や思慮深さ、人間的豊かさを養うなど人格形成に役立つもの。教師が一方的に教える知識の伝授だけの講義だけではなく、もっと熱く議論する場を増やしてほしい。それを重ねることで、コミュニケーション能力が身につくと同時に自分の軸を確立していくことにもつながる」と指摘する。“働く”につながる「専門性」と「行動特性」をいかに大学教育を通して育成し、それを証明するか昨今の変化として、今の若年層の育成体系は、従来の様々な部署を経験してマネジメント職を育成するゼネラリスト養成型と、早期に専門教育を修得させてプロフェッショナリティを高めるスペシャリスト育成型の大きく2つに分かれている。その結果、専門性重視のポテンシャル人材とリーダー候補の行動特性を絞り込んだ選考がより鮮明になりつつあるように思う。大学での“学び”と社会に出てからの“働く”をスムーズに接続するためには、こうした動きに対して、大学は、正課内外の学習や経験を通して、学生の「専門性」を深化させると同時に、企業が求める人材像にもつながる「行動特性」をどのように育成するかという設計図が必要になるだろう。特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ中田智史 セブン-イレブン・ジャパン人事部採用担当マネジャー
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