カレッジマネジメント197号
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24国立大学協会は、2015年9月に、標記のアクションプランを策定・公表した。策定にあたって留意した高等教育を取り巻く基本的な認識は、確実にやってくる少子化と厳しい我が国の財政状況であった。この2点は容易に変えがたく受容せざるを得ない物理的な問題である。策定にあたっては、もちろん、グローバル化し激動する社会情勢等についても勘案した。国立大学の使命と役割を再確認したうえで、これらの問題を直視しつつ、将来にわたり国立大学が世界に開かれた高等教育機関として、次代を担う学生の育成、地域の多様性と活力発揮、イノベーションの創出等を牽引していくための主体的な改革の方向と工程表を明らかにした。当面重点的に取り組む課題として、「優れた資質・能力を有する多様な入学者の確保と受入環境の整備」及び「大学間等の機能的な連携・共同による教育研究水準の向上」を掲げている。特に前者については、少子化が進む一方で、我が国の大学入学者率が他の先進諸国に比べて必ずしも高くない点、また社会人の学び率も極めて低いこと、あるいは海外からの入学者も十分とは言えない状況であることに留意すべきであると考えている。即ち、高等教育を受ける多様な資質を持った18歳にさらに多くの選択肢と就学支援が、社会経済の高度化やグローバル化の進展に伴う社会人の学び直しのニーズへの対応が、また科目ナンバリング等の国際的な通用性を備えた学修システムの開発等による留学生受け入れ環境の整備などが必要である。留学生の受け入れに関しては、例えば留学生を国立大学総体として受け入れ、複数大学での学習を可能にして学生の大学間の流動性を高めることなどを提案している。国立大学の入試の現状現在、国立大学はその入学者に、①入試教科・科目にとどまらず基礎的・基本的な全般の教科・科目に関する幅広い学力・教養、②単なる知識ではなく、知識を関連付けて解を導く論理的な思考、③大学で学ぶ学問分野に対する強い関心と学問を通じて社会に貢献する意欲、等を備えていることを期待している。このため、各大学は、それぞれのアドミッション・ポリシーに基づき、一般入試においては、基礎的・基本的な教科・科目についての学習の達成度を測る共通試験(大学入試センター試験)と各大学の実施する個別試験の組み合せにより、適切な選抜に努めてきた。個別試験では、記述式・論述式問題により論理的思考力・判断力・表現力を問う学力検査を行うほか、多くの大学は募集単位の一部で意欲、適性等を評価するために面接、小論文、実技試験等を課している。前期日程・後期日程の分離分割方式によって実施している個別試験は、複数の受験機会の提供とともに、選抜方式の多様化と評価尺度の多元化につながっている。最近では一般入試以外に推薦入試・AO入試を導入する大学も増えている(図表1)。さらに、社会人、帰国生徒、留学生等を対象とした特別選抜も実施されている。リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016国立大学の入試改革について「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」の考え方に基づいて永田恭介 国立大学協会副会長、筑波大学長「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」について

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