カレッジマネジメント197号
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27リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016現在の企業を取り巻く環境は非常に厳しい。経済の成熟化、人口減少、超高齢化、顧客の志向の多様化、興味の短期サイクル化、競争のグローバル化等、キーワードをあげればキリがない。そのような環境下でも競争を勝ち抜き常に持続的成長が求められる企業にとって、「競争力の源泉である人財を最大限活用すること」は最重要課題である。そしてそのためには、個々の人材がその持てる力を効果的に発揮するため、入社時に本人が納得度(モチベーション)の高い状態で入社し、成長し、活躍人材になっていくというサイクルを回すことがとても重要になってくる。そこで企業は、「採用・配置・育成・評価・等級・処遇・代謝」という人材マネジメントシステムをいかに一貫して機能させるかに、長年知恵と工夫を凝らしてきた。一方で大学においても、昨今、大学教育の成果(アウトカム)により注目が集まるようになってきているが、各大学が持つ教育理念やディプロマ・ポリシーの実現のためには、できるだけその大学の個性や特性に合った学生を入学させ、教育によってその後の成長を促し、十分な知識と経験を得て、満足度高く卒業していくというサイクルを創りだすことが求められている。特にその起点となる入学段階において、その後の成長期待値の高い学生を選抜し、モチベーションが高い状態で入学してもらうことが重要となる。そのためには、大学と学生がより互いの個性を理解したうえで、マッチングレベルの高い選択を行うことが必要であろう。まさにこの点が、企業の採用活動の本質部分に近いところであると考えられるため、本稿では、企業がこれまでに試行錯誤し磨いてきた採用活動のノウハウを具体的にお伝えすることで、今後の大学における入試改革の何らかのヒントになれば幸いである。企業の採用活動とはまずは、企業の採用活動はどのようなものかについてお伝えしたい。その内容を理解するには、3つのポイントにそって見ていくと分かりやすい。順に1つずつご説明しよう。①大学の募集活動に似た、「5つのプロセス」企業の採用活動のプロセスは、大きく5つに分解できる。図表1の中段にある矢羽根がそれに当たり、母集団形成・動機づけ・選考・意思決定促進・受け容れ準備の5ステップで表現できる。倫理憲章による広報活動解禁の3月からカウントすると1年強の期間を通じて、この5スリクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016企業の採用活動から見た「相互選択型入試」の可能性竹内淳一 株式会社リクルートキャリア インフローソリューション統括部 エグゼクティブコンサルタント──「個性化」と「マッチング」の両輪が鍵特集 相互選択型の入学者選抜へ1993年リクルート社。通信事業部にて営業、SE、コンサルタント、人事採用部門での採用業務を経て2004年から人事制度コンサルティングを行うHRR(現リクルートマネジメントソリューションズ)、その後リクルートキャリアに所属。組織マネジャー・プロジェクトマネジャーとしてコンサルティングや営業、サービス開発を行い、11年より現職。製造・サービス・IT・金融・飲食などに対するコンサルティング実績多数。大学入学者選抜に求められている構造は、企業の採用活動に近い

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