カレッジマネジメント197号
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30リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016意思決定そのものといえる。ただ、ここで大きな問題になるのが、その「未来を創る」意思の中にどのような観点を込めるのかであり、そこに求められるのは経営者が常に抱える次のような相反問題になる。「継承し続けるものと変えるべきもの」、「共通して求めるものと多様であって良いもの」、そして「今日を支えることと未来を創ること」である。それらを同時に満たす状態を作ることが経営の本質といえるが、そのなかでも採用活動には「新しい人材を迎えることでその相反を同時に満たす状態を実現すること」が求められる(図表3)。ここで、ホンダ社の人材要件についてもう一段掘り下げてみたい。図表3でお伝えした「人材要件に込めるべき3つの対立軸」を活用して、ホンダ社の人材要件を分解してみたのが図表4である。ホンダ社の社員には、普遍的にHondaismを求めながら、一方で激しい変化の中にあるグローバル競争下においてそれぞれに対し常に創意工夫を求めていく。また、一人ひとりの意欲と主体性を絶対的に求めつつ、様々な属性の個々が様々な得意を持つ多様な状態を良しとする。そして、事業を推進し成長させていくため、個々に対し着実に今日を支えることと挑戦し明日を創りだすことを同時に求める。そのようなメッセージが発信全体の中から見えてくる。このように、それぞれの企業では自社の個性化を行い、それを「人材要件」という形で採用活動の判断基準に据えることで、自社の将来に必要な人材を確実に採用する活動を行っている。活躍人材を生み出すリクルーティング前述の通り、「人材要件」は採用活動の方向性を決め、判断の基準となる重要な要素である。そのため、それを正しく捉え、採用施策の中に一貫して反映させないと採用活動をミスリードしてしまうことになる。ここからはそれをうまく反映させ、競合に負けない強い採用活動を行っている企業のポイントを見ていきたい。 <「人材要件」を軸にした一貫施策で、多様な個と自社をマッチング>採用が強い企業は、人材要件を全ての施策に生かしている。全ての施策が人材要件を基準にして設計され、一貫した判断基準によって運用される。これが施策間を連動させ、採用活動を向かいたい方向に導いていく。具体的には、動機づける際のメッセージを人材要件の持ち主に響く内容にする。選考する際の採用基準を人材要件に基づくものにする。そして、決断を促す際にも決定的なコミットメントポイントを人材要件に沿った内容にする。これが具体的な一貫させた状態だ(図表5)。その行き着く先は「多様な個と自社のマッチング」である。今回の冒頭でお伝えした通り『マッチング』とは、図表3 人材要件に込めるべき3つの対立軸継承し続けるもの 変えるべきもの 共通して求めるもの 多様であって良いもの 今日を支えること 未来を創ること Hondaism 常に起こる変化に対し、 創意工夫 継承 従業員一人ひとりの、 意欲と主体性 共通 着実に遂行 今日 常に挑戦 未来 国籍・性別・能力 多様 変える 図表5 人材要件をベースにした採用活動の「てんびん構造」動機づけ 個性化された人材要件 どうメッセージして… 数年後に戦力になる人材に求めたいこと… を行うか? 決断促進 何をコミットメント ポイントとして… を行うか? 選考 どういう採用基準で… を行うか? 図表4 ホンダ社の人材要件に対する筆者の解釈

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