カレッジマネジメント197号
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47医療を、教員も学生も一緒の目線になった師弟同行の考えの下に追い求める教育を、チーム医療という概念すら普及していなかった1960〜70年代に打ち出していた」と星長学長は話す。この理念を具体化したものが「アセンブリ教育」の伝統だ。アセンブリ教育は、藤田保健衛生大学の学生全員を対象に実施される独自のカリキュラムで、学部・学科の枠を越えた共通の活動により、チーム医療に欠かせない能力を段階的に身につけるプログラムである(図表1)。アセンブリ教育の成果として、藤田保健衛生大学の学生は、患者に寄り添う姿勢、優しさに優れていると、星長学長は話す。「赴任前、初めて本学の卒業生と接したとき、周りの医者との違いを強く感じた。亡くなる患者の苦しみに寄り添う、看取りの精神を備える人材であった。技術の優秀さも大事だが、優しさを持つことが良い医療者としての原点である」。このようなアセンブリの理念を、現代の課題に合わせて入試にて発揮しようとする取り組みが、「アセンブリ入試」である。藤田保健衛生大学の理念を体現し、かつ個性を発揮して同期生を牽引する人材を、ディスカッションを含む丁寧な入試によって選抜する試みだ。「本学は、これまでの教育でも、良き医療職を数多く育てあげてきた。その成果は、高い試験の合格実績や、就職先の評判からも明らかである。ただ、今後のグローバル社会で活躍できるような、獨創一理の理念を体現する個性を備えた人材を育成するために、もう一歩踏み込んだ挑戦が必要と考えた」と金田副学長は話す。アセンブリ入試の導入に当たっては、医療科学部の若手教員を中心に、時間を惜しまずに入学者選抜を行おう、との考えの下、議論が進められた。最終的には、入学定員450名のうち、約3%に該当する14名の定員が、アセンブリ入試に割り振られた。「画一的な規準によって、そこに満たない受験生を振り落とすという発想ではなく、いかに受験生の個性を導き出すかを目的として議論した。このような個性を持った学生が、60名のクラスに1名ほどの割合で配置できれば、学年全体の個性の発揮にも影響を与えると考えた」と金田副学長は話す。学生の独自性を引き出すための入試選考プロセスアセンブリ入試の仕組みは、高校時代の活動をまとめたアクティブレポートと国際適性に関わる英語力の評価から成る第1次試験、科学適性に関わる学力試験とグループディスカッションから成る第2次試験による、2段階での選抜となる(図表2)。「各選抜方法の点数配分については、悩ましい課題であったが、最終的にはグループディスカッションの配点を高く設定した。学業成績だけでは測定できない、個性・協調性・発言力等を総合的に見いだすことが、この新しい入試の中心的な課題であると考えたためだ」と金田副学長は話す。グループディスカッションでは、医療科学部の6学科リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016全学活動班 活 動チームでテーマを決定チームでテーマを決定図表1 アセンブリ教育についてアセンブリは、本学の学生全員が学部・学科の枠を越えた共通の活動を通して、チーム医療に必要な力を習得する独自のカリキュラムです。2015年度からは、1年次に「アセンブリⅠ」、2年次に「アセンブリⅡ」、さらに3・4年次に「アセンブリⅢ(高学年アセンブリ)」と、入学から卒業まで継続して学べるプログラムを導入。チーム医療に欠かせない力を段階的に身につけられます。※専門職連携教育とは、英語でIPE(interprofessional education)。学部学科の垣根を越えて「患者さんの健康問題」について、共に学ぶことを目標としています。2015年からは、地域に視点を広げましたので、「地域住民の健康課題」について、共に学ぶことも含めました。一言でいえば、学部学科の垣根を越えて「患者さん、または、地域住民の健康問題」について、共に学ぶことを目標としています。救急救命講習・手洗い講習等スポーツや研究、文科系に分かれて活動地域との連携・ボランティア等専門職連携教育※アセンブリⅠ(1年次)は、主に全学活動と班活動を実施。チーム医療の基本精神を学びます。ⅠアセンブリⅡ(2年次)では、学部・学科の枠を越えて5~10名のチームを編成。活動は基本的にチーム単位で行い、活動目標、活動スケジュール等を学生が決定。地域との連携やボランティア、医療人としての基盤形成、リサーチマインドの養成等、それぞれのチームがテーマを設定し、主体性を持って取り組んでいきます。ⅡアセンブリⅢ(3・4年次)は、医学部と医療科学部を対象に実施。TBL(Team Based Learning:チーム基盤型学習)によるグループ学習で、「患者さんの健康問題」に取り組みます。こうした教育を通して連携意識の向上を図り、卒業後にチーム医療を現場で実践する際の充実した基盤づくりを目指します。Ⅲ特集 相互選択型の入学者選抜へ

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