カレッジマネジメント197号
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52もはや「アクティブラーニング(AL, Active Learning)」の言葉を一度も耳にしたことのない教職員はいなくなりつつある。グループワーク等のALの手法を一度ならず実践したことのある教員も増えてきた。オンライン上での教育専門家による無料指導が行われ、優れた成功事例の共有が始まっており、教育としてのALはその導入段階を終えて、急速に次の段階に入りつつある。これからの数年はアクティブラーニングを実施してきた教育の成果を振り返って検証するとともに、あるべきALのあり方を磨き上げていく実質化の段階に突入していく。その今だからこそ現下に進行しているALを批判的に省察することのできる視点を持ちたいところである。アクティブラーニング失敗事例ハンドブックの到達点と限界文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」(平成24~26年)の3年間、筆者は中部地域23大学グループの一員として、「アクティブラーニングを活用した教育力の強化」というテーマで、地域社会や産業界と連携したサービスラーニングに取り組んだ。この取り組みの最終年度で『アクティブラーニング失敗事例ハンドブック』(2014年11月刊一粒書房、以下のサイトより入手可能 http://www.nucba.ac.jp/social/report/lecture/entry-14562.html)を作成した。これは他者の躓きの石を「他山の石」とすることを狙い、21の失敗事例について、問題行動、失敗原因と結果を紹介するとともに、その対策と知識化を行ったものである。同時に、収集したAL失敗事例を一望の下に示す「失敗原因マンダラ」を作成した(図表1)。中央の失敗原因を取り巻く第一円環にある①知識技能不足(学生-能力面)、②目的喪失(学生-志向面)、③価値観の固執(教員-志向面)、④授業準備不足(教員-能力面)、⑤組織能力不足(大学や学部学科等の組織-能力面)、そして第二円環に展開していく点に注目してほしい。もちろん失敗原因は必ずしも単独でなく、複数原因が複雑に絡み合い発生するものであるし、本図に含めるべき項目が恐らくほかにもあるだろう。以下、このハンドブックの二つの到達点と一つの限界を示す。全体を図示すれば、直接的な問題行動を起こす主体が「学生/教員/組織」の3つのうちのいずれかであること、そしてその原因が大別すれば「能力面/志向面」の2つのいずれかに関わるものであることが見て取れる。このAL失敗原因の鳥瞰図としての役割を果たしたことが、第一の到達点である。第二の到達点は、プロセスへの注目である。成功したときはその事実だけでもって行動の全てが肯定されてしまいやすい。しかし、失敗したときは行動そのものの反省はもちろんのこと、それがなぜ・どのようにして失敗に至ったリクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016アクティブラーニングの実質化に向けての課題と対応策失敗分析からの学び亀倉正彦 名古屋商科大学 経営学部 教授慶應義塾大学博士課程満期退学・商学修士。専門は経営資源論。文科省の「就業力事業」(2010-2011)の主担当者。同「産業界ニーズ事業」(2012-2014)で中部圏23大学のうち東海Aグループ(=アクティブラーニング)担当副幹事校の主担当者。寄 稿

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