カレッジマネジメント197号
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67リクルート カレッジマネジメント197 / Mar. - Apr. 2016を発信しながら、ステークホルダーや社会の支持を得ていかなければならない。競争が激化し、経済環境が厳しさを増せば尚更である。そのためには、ヒト、モノ、カネと並ぶ4つの経営資源の一つとされる「情報」の収集、分析、活用が不可欠であり、その巧拙が組織の持続可能性を左右すると言って過言ではない。大学においてIRが重視される理由もこの点にある。IRを確立し、定着させるために特に必要なことは、①IRの目的の明確化、②収集する情報の選択・整理、③情報の収集・管理に係る組織の役割・責任体制、④情報を活用する能力の向上、⑤データウェアハウスの構築等情報インフラの整備、の5つである。大学には、数値を用いて議論することに抵抗感を抱く教員も少なくない。教育や研究の成果は数値で測れないというのがその理由である。また、学部・研究科や事務組織の各部署がデータを保有しながら、他部署に提供したがらないという傾向も見られる。情報は数値情報だけに限らず、定性情報も必要だし、定量・定性のいずれの情報でも表せない皮膚感覚や直感も重視すべきであろう。そのことも含めて、組織全体として情報に対する感度を高め、大学機能の高度化のために情報を最大限活用するという意識を定着させていく必要がある。IRの取り組みで注目される佐賀大学の佛坂孝夫学長(2015年9月退任)は、「学長をはじめとする大学の経営層が根拠データに基づく大学経営を行うことをまず意識・宣言し、改善評価を実践していこうとすることである。そうした中で大学の構成員全体が共通認識を持ち、改善に向けたPDCAサイクルの仕組みが自ずと醸成されていくことになるはずである」(佛坂孝夫, 2015.2, 『大学版IRの導入と活用の実際』実業之日本社)と述べている。懸念すべきは、IRを担当する専任職員の配置や情報インフラへの投資が可能な大規模校と、それらが容易ではない中小規模校の間に差が生じる可能性があるという点である。IRの仕組みやデータウェアハウスの構築を複数校が共同で行う等の方策を講じる必要もある。より良き「評価」の仕組みの構築を目指す時期ここまで内部質保証システムとIRについて述べてきたが、「評価」の課題はこれだけにとどまらない。設置認可との関係を含めて認証評価の目的をより明確にする必要があり、国公立大学の法人評価と認証評価の関係についてもさらなる改善が求められる。また、現行の機関別認証評価は、当該大学の教育研究等の総合的な状況について評価を受けることになっているが、「分野別の教育課程評価こそ、充実させていくことが求められる」(舘 昭, 2007.7,『改めて「大学制度とは何か」を問う』東信堂)との指摘もある。日本技術者教育認定機構(JABEE)の「技術者教育プログラム認定」は任意であるがその一つであり、国際的同等性を確保するため、ワシントン協定等国際的な枠組みに加盟している。教育の成果の測定も引き続き大きな課題である。山田礼子同志社大学教授を中心に、長期にわたり継続的に実施されている「学生調査」にも注目したい。これまでの様々な取り組みによって蓄積された知見に基づき、より良き「評価」の仕組みの構築を目指す時期にきている。IRの目的 ・ 意思決定(戦略・計画策定、資源配分、重要施策) ・ 改善課題の発見、新たな施策の検討 ・ 進捗状況の管理、成果の確認・検証 ・ ステークホルダー及び社会への説明収集する情報 ・ 基本情報(大学概要、学校基本調査等) ・ 経営情報(財務・会計、人事、教職員意識、施設・システム等) ・ 教育情報(入学者、在学者、教育成果、進路、学生支援等) ・ 研究情報、国際交流、社会貢献 etc.組織の役割・責任体制 ・ それぞれの情報の収集、管理に責任を持つ部署の明確化 ・ IR機能を担う組織の責任で収集・管理する情報の範囲の明確化 ・ 各部署とIR機能を担う組織の役割・責任分担と連携体制の明確化 ・ 情報アクセス権の適切な設定・管理情報活用能力の向上 ・ 構成員全体:情報の有用性に対する理解、情報を読み解く能力 ・ トップマネジメント層:情報を意思決定に使いこなす能力 ・ ミドルマネジメント層・実務層:情報リテラシー、調査・分析能力 ・ IRスタッフ:統計分析、社会調査、シミュレーション 情報インフラの整備 ・ データウェアハウスの構築等情報インフラの整備(各部署に散在するデータ及び新たに必要となるデータを効率的に収集・分析するための情報基盤の構築)IRの確立・定着に向けて必要な事項

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