カレッジマネジメント198号
11/66
11の熟議を重ねる。この一連の思考のサイクルをまわすための資質・能力は、成熟社会を生きる一人ひとりに必要な、言わば「共通通貨」と言って良いだろう。その育成に各国がしのぎを削るなか、15歳の子ども達の論理的思考力等を測るOECD(経済協力開発機構)のPISA(学習到達度調査)2012年において、我が国は加盟国中トップ。2008年改訂の学習指導要領を踏まえ、「ゆとり」か「詰め込み」かという不毛な二項対立を超えて、記録・要約・説明・論述・討論といった言語活動を通して、知識を活用したり探究したりといった学習プロセスを重視しているわが国の義務教育のパフォーマンスは高いと言える。進化する高校教育の最前線しかし、義務教育を卒えた子ども達は、高校・大学と学び続けるなかで知的に伸びているだろうか。文部科学省の「高大接続システム改革会議」は、高校教育は、小・中学校に比べ知識伝達型の授業にとどまる傾向があり、その背景として、①現状の大学入学者選抜では、知識の暗記・再生や暗記した解法パターンの適用の評価に偏りがちであること、②一部のAO入試や推薦入試においては「学力不問」と揶揄されるような状況も生じていることがあると指摘している。ただ、この20年、一部の高校においては、教育の質的転換のための先駆的な取り組みが、地道にしかし確実に行われている。例えば、福岡県立城南高校の「ドリカムプラン」。高校入学時からステップごとに自分の進路や進学先について考え、悩みながら探究し、教師も「ドリカム顧問」として個々の生徒の探究に真正面から向き合って進学に対する動機を育む体系的な進路指導は、主体的・対話的な深い学び(アクティブラーニング)の先駆であり、全国の高校のキャリア教育に大きな影響を与えた。九州大学21世紀プログラム入試等でも顕著な成果を上げた、ドリカムプランの立役者の和田美千代先生は現在、福岡県教育センター教育指導部長として福岡県の高校教育改革をリードしている。荒瀬克己大谷大学教授の『奇跡と呼ばれた学校』(朝日新書)は、京都市立堀川高校の校長として同校に探究科をリクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016特集 高大接続改革への「高校の挑戦」社会への送り出し(学校教育の入り口から出口まで一貫して社会との関係を重視) 3つのポリシーの一体的な策定と、それを踏まえた大学教育への質的転換の実現(受け身の教育から能動的な学修へ) 全ての個別選抜を学力の3要素を適切に評価するものに改革(現行の一般入試、推薦、AO区分の廃止と新たなルール作り) 学習指導要領の改訂や基礎学力テストの導入による高校教育の改善 幼稚園・保育所・認定こども園 家庭 小・中学校 高等学校基礎学力テスト(仮称) 大学入学希望者学力評価テスト(仮称) アドミッションポリシー 初 年 次 教 育 ディプロマポリシー カリキュラムポリシー 大学入学者選抜 高等学校 専修学校 高等課程 高等専門学校 高校中退経験者 専門学校等 就職等 社会人 大 学 【学科】:普通科・専門学科・総合学科 【課程】:全日制・定時制・通信制課程 (※)特別な支援を必要とする生徒、不登校等も存在すること。 ポリシーに沿った選抜の実施 ポリシーに対応 ポリシーに沿った 初年次教育の実施 高校学習 指導要領 図表1 初等中等教育から大学教育までの一貫した接続イメージ(高大接続改革の全体像)
元のページ