カレッジマネジメント198号
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14リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016してきた結果、学びへのインセンティブを失っている生徒が少なくない現状を踏まえ、義務教育段階の学習内容も含めた基礎学力の確実な習得と、それによる生徒の学習意欲を喚起するために、高校の共通必履修科目について、CBT方式、相対評価ではなく一人ひとりの基礎学力の定着度合いを段階で表示というイメージで構想されているのが「高等学校基礎学力テスト(仮称)」である。姉崎高校の「マルチベーシック」のような取り組みが大いに後押しされることが期待される。他方、選抜性が一定水準以上の大学の入試が、知識の暗記・再生や暗記した解法パターンの適用の評価に偏りがちと指摘されて久しい。初等中等教育において、習得・活用・探究という学習プロセスの中で言語活動が重視されていることを踏まえ、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、主体性を持って多様な人々と協働するという大目標のために、問題を発見し、その解決策をまとめ、実行するために必要な諸能力(図表2)を重視するとともに、記述式問題を導入することとしている(図表3)。同テストにおいて、5つの選択肢の中から必ず「正解」があることを前提にした知識の習得だけではなく、テクストに表された「情報間の関係性」を理解し、統合・情報化して新しい考えをまとめ、表現することが求められることは、学習指導要領改訂と相俟って、高校教育の質的転換へのインパクトが非常に大きい。この2つのテストの制度設計と学習指導要領改訂に共通しているのは、子ども達の未来社会を創造する資質・能力を、初等中等教育から高等教育を通じて一貫して育むという基本構想である。次に問われるのは、大学教育ならば、次に求められるのは、初等中等教育が育んだ学生の資質・能力を大学が4~6年かけてどこまで伸ばすかであろう。教授の個人芸にとどまらず、組織として横串の通ったカリキュラムを提供している大学はどこか、どの大学に研究上のエッジがあるのか、これらの特長を引き出すべく、逃げずにマネジメントに取り組むための緊張感あるガバナンスを確立している大学はどこか。高校はもう大学入試を理由に教育の質的転換を怠ることはできない。大学も高校教育の質を言い訳にせず、学生の未来社会を創造する資質・能力を、入学から卒業までの間に確実に育むことが求められている。小論文 解答の 自由度の高い 記述式 条件付記述式 (説明・要約・ 作図など) 連動型 複数選択 +記述問題 多肢 選択式 連動型 複数選択 問題 (仮称) マークシート式問題 共通テストになじむ問題 個別選抜になじむ問題 一定の基準に基づき評価可能な 記述式問題 穴埋め式 (計算問題 など 短答式 「大学入学希望者学力評価テスト (仮称)」(記述式) 大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」 思考力・判断力・表現力 容易 採点可能性 困難 評価の対象となる能力 知識・技能 従来の大学入試センター試験 例えば、設問で一定の条件を設定したうえで、それを踏まえて、結論や結論に至るプロセスを解答させるなど 答えが特定 される問題 ※上記、○囲み部分は、あくまで問題  形式の一例として挙げたもの。 創造性・独創性・芸術性等の 評価も含む記述式問題 図表3 「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」とそれらを評価する方法のイメージ例(たたき台)特集 高大接続改革への「高校の挑戦」

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