カレッジマネジメント198号
17/66

17――先生は、高大接続システム会議の中で「多面的な評価を検討するワーキンググループ」の主査もなさっています。多面的というのは、生徒のそうした幅広い能力まで評価するということでしょうか。はい。これまであまり評価してこなかった定性的なものを評価するのは至難ですが、そこに取り組んでいこうという方向で議論が進んでいます。もちろん、1点刻みではなく段階別に評価することになるでしょうが。同時に、各科目の評価に当たっては、これまで小中学校と比べ重視されてこなかった観点別評価を高校でも十分活用する必要があるとしています。観点自体も、学力の3要素を踏まえ、「知識及び技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」に見直します。これにより、「この生徒は基礎的な知識・理解は十分ではないけれど、手にした力を積極的に使おうとする意欲はある」とか、「関心はあるけれど、技能が不十分だから使えない」といった評価も可能になります。調査書を書くうえでのベースとなる「学習指導要録」についても、観点別学習状況の記載欄を設けるなど、学習指導要領の改訂に伴い、拡充させることを検討しています。――とはいえ、高校の教員が評価しにくい活動もあると思いますが、そうしたものはどう扱うのでしょうか。無理に評価する必要はないように思います。ただし、生徒の具体的な活動をきっちりと把握している必要はあります。指導要録や調査書には記載できませんが、生徒自身の自己評価を見ることも重要です。各種資格やコンテスト・コンクール等の成績、ボランティア活動、総合的な学習の時間における取り組み、生徒会活動、部活動等について正確に伝えることは高校の務めです。どう評価するかは、大学のアドミッションポリシーに関わる問題だと考えています。先ほども言いましたように、大学入学者選抜で使われるかどうかはさておき、生徒自身が、「自分の取り組んだこと、考えたことがきちんと評価を受けるのだ」と納得できるのは大切なことです。自己肯定感にも繋がるでしょう。生徒自身が、自分を振り返り、自分の「いま」と「これから」、つまり、どうありたいのかといった考えをまとめることも重要です。よく聞く話ですが、評定平均値が高いにも拘わらず、指定校推薦の際、大学に提出する志望理由書が十分に書けないという生徒がいます。その大学で何をしたいのかが言葉にできない。思いはあるけれど言語化できないのは訓練すればよいのでしょうが、言語化するべきものがないのは、とても不幸です。そこで私見ですが、全ての高校生がキャリアプラニングする機会を作ってはどうかと思っています。小中学校かリクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016特集 高大接続改革への「高校の挑戦」多面的評価を契機に、生徒自身が自分について深く考える機会を作りたい図表2育成すべき資質・能力の三つの柱を踏まえた日本版カリキュラム・デザインのための概念出典:平成27年8月26日 教育課程企画特別部会における論点整理について(報告) 補足資料主体性・多様性・協働性 学びに向かう力 人間性 など どのように学ぶか (アクティブ・ラーニングの視点からの 不断の授業改善) 学習評価の充実 カリキュラム・マネジメントの充実 思考力・判断力・表現力等 個別の知識・技能 どのように社会・世界と関わり、 よりよい人生を送るか 何を知っているか 何ができるか 知っていること・ できることをどう使うか

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 17

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です