カレッジマネジメント198号
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18リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016ら積み上げる形で高校に引き継がれ、その過程で何度も本人が書き加える。これが、大学の合否判定材料になってもいいのではないかと思います。多面的な評価とは少し意味合いが違いますが、これからは、評価を受ける材料を生徒自らが作ることも大切だと思います。――これまでずっと、点数で測れる狭義の学力こそ公平な判断材料だと思われてきましたが、今、なぜ、このような多面的な評価が必要になってきたのでしょうか。高大接続システム改革会議においても、「公平な評価は大切だが、果たして公正な評価ができていたかどうかは分からない」という議論がありました。同じ一つの物差しで測るという点では公平だったかもしれないが、その生徒の評価として公正だっただろうか、という問題提起でした。評価するべき能力はほかにもあるのに、点数化しやすいものだけで比べ、みなで納得していたわけです。求められる能力にしても様々です。例えば、独創的なアイデアを出すことに秀でたA君B君C君が、それぞれのアイデアを出し紛糾していたとします。そこへD君がやってきて、3人の話を聞いたうえで、「では、こんな組み合せはどうだろう」と提案し、話がまとまった時、このD君の調整力もまたひとつの優れた能力です。できれば、こうした力まできちんと評価できるようにしていきたいのです。――ありがとうございました。続いて「指導方法の改善」についておうかがいしたいと思います。冒頭、アクティブラーニングの話題がありましたが、高校での取り組みはうまくいっているのでしょうか。高校現場でも当初、誤解がありました。本来アクティブラーニングとは、知識が定着するとか、学びが深まるとか、学習意欲がわくといった目的を持った手法のはずでしたが、型と受けとめる先生方が大勢いました。そもそもオールマイティーな型などなく、ある場面で有効でも、別の場面で有効であるとは限りません。そのため今は、型ではなく視点が大切だと強調しています。前述した教育課程企画特別部会の「論点整理」でも、アクティブラーニングにおける3つの視点を示しています。即ち、ⅰ)習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。ⅱ)他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。ⅲ)子供達が見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。つまり、深い学び、対話的な学び、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。教わったことをテストまで記憶するだけの学び、閉じた学びからの脱却です。他者との関わりを深くする中で、例えば、「あいつがいると、すんなりいかないところが面白い」という気づきが生まれたり、場合によっては、「いや、よく分からないんだけど」と頻繁に口にする人物の存在価値が高まったり、というこ生徒主体の指導方法への改善で、真の学力を引き出すことを目指して

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