カレッジマネジメント198号
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202011年、富士市立高校は商業科単独の吉原商業高校から3つの学科を持つ総合型専門高校へ改編され、新たな出発の途についた。商業高校を卒業して事務職に就職という構図が崩れて久しく、商業高校としての存在意義をどこに見いだすかが問われるようになっている。当時の吉原商業高校もその例に漏れず、学習内容と進路とのミスマッチが顕著な状況に陥っていた中での改組である。生徒、保護者、中学校教員、その誰に対しても魅力的な高校に再編せねばならない。そこで、学校のコンセプトを考えるという根本からの検討が始まった。2005年度からの検討の結果、2008年度にC・D・Iという3つのコンセプトが定まった(図表1)。Cはコミュニティハイスクール、県立ではなく市立高校であるため、より密接に地域との連携が可能である。Dはドリカムハイスクール、生徒達には夢を持ち、その夢を実現すべく学んでほしい。Iは探究(Inquiry)ハイスクール、これからの時代を生きるうえで、探究心は不可欠な力である。校訓は「考えよ」であり、探究心の育成というコンセプトは校訓の具現化である。このコンセプトをいかにしてカリキュラムとして編成するか、それが次の、そして最大の課題であり、2009〜2010年度にその検討が行われた。探究心は受け身では身につかない。生徒自らが問いを立て、考え、答えを導く、そうした姿勢での学習が繰り返される必要がある。そのためには、課題解決型の授業とするのが良いというところまでは、比較的容易に到達する。問題は、それを授業の内容・方法に具体的に落とし込んでいく作業である。課題解決型学習で有名な高校の事例はあるものの、それをそのまま導入しても効果はない。なぜなら、この高校への入学者の特性を考慮してこそ効果があがるからである。高校の再編計画に当初から関わってきた眺野大輔指導主事(取材当時)は、当時を振り返ってこの過程が大変だったが、とても重要なプロセスだったと語られる。3年間に課題解決型学習を5回繰り返す「究タイム」新高校の3つの学科には、総合探究科、ビジネス探究科、スポーツ探究科といずれも「探究」がついており、学校全体として探究心の育成を掲げている。それを形にしたのが、3学科共通、週2時間の総合的な学習の時間に行う課題解決型リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016校訓「考えよ」を実践する「探究心」の育成富士市立高校の課題解決型学習図表1 富士市立高校のコンセプト郷土愛を胸に、夢の実現にチャレンジし、様々な世界で活躍する若者の育成富士市立高等学校C A S E1コンセプトはC・D・IDATA【学  科】総合探究科・ビジネス探究科・スポーツ探究科【創  立】1962年【生 徒 数】704人(男子281人・女子423人)【進路状況】四年制大学90人、短大20人、専門学校63人、就職43人、その他1人(2014年度実績)Iinquiry探究ハイスクール物事の本質を追求し、自分自身と向き合い向上心と探究心に満ちた高校Ccommunityコミュニティハイスクール地域、学校との連携を図り「自律する若者」を育てる高校Ddreamドリカムハイスクール※夢を持ち続け、生涯にわたって学び続ける力をはぐくむ夢実現高校※Dreams come true(夢実現)の略

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