カレッジマネジメント198号
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21学習で、「究タイム」と命名された。半年を1単元とし、3年前期までの5単元から構成されている。半年のスパンで、異なるテーマと方法による課題解決型学習を5回繰り返すスパイラル構造になっている点に特徴がある(図表2)。1年次の「序」ではブレインストーミングやKJ法を学び、「論」ではディベートを行い、2年次の「活」になると地域に出て具体的な課題の解決を行い、「究」ではこれまでの学習を総合して、自分で設定したテーマを探究してレポートを作成。3年前期の「夢」では高校生活を振り返り、3年間の成長と将来との繋がりを意識したスピーチを作成する。課題を解決するためのスキル・手順・表現の習得を、テーマを変えつつ2年半かけて徹底的に刷り込むのだという。このカリキュラムには、いくつか工夫が凝らされている。とりわけ重要な2点に絞ってとりあげよう。第1は、どの単元においてもPDCAサイクルを回すために、発表の機会が複数回あり、その結果を受けて次へフィードバックする仕組みがあることだ。発表が単元の最後だけでは、生徒にとって指摘された問題点を解決する機会がない。しかし、中間発表等を入れることで、指摘を受けて改善を考える機会が生まれる。次があるから、生徒は失敗を恐れずチャレンジするようになる。第2は、学習の深度を増していくための工夫である。例えば、2年前期まではチームでの課題解決型学習であり、その後は個人のテーマにもとづく課題解決型学習になる。チームを4人としているのは、相互依存する構造を作らず、誰もが責任を持って考え、発表する機会を持つための工夫である。こうしたチーム学習を経て課題解決の方法を習得することで、個人としても自立的に学習ができるようになる。また、当初はブレインストーミングやディベート等音声での発表が主であるが、次第に文字での発表の比重が高くなっていく。まずは論理的思考を口頭発表として習得し、次第に文章表現とするための工夫である。また、課題解決型学習に不可欠なのが資料の収集である。1年の時には、書籍、新聞、ネット等の既存の情報から資料を得ることが中心だが、2年になると地域に出て人から話を聞き、それを資料として利用することを学ぶ。人の話を資料とするのは、得たい情報が得られるか、情報の偏りがないか等を考えねばならないため、既存資料の扱いよりは困難が伴う。これらも情報の特性や扱い方について理解を深めるための工夫である。教材は地域・教師は地元の大人2年前期の「活」は、課題解決型学習の実践編である。学校のコンセプトの1つである地域との連携の多くがここに集約している。「市役所プラン」と称されるフィールドワークであり、生徒は富士市役所の高校生職員として地域の課題解決に当たり、解決策の提案を行う。当初は、健康福祉課、環境課、防災危機管理課に分かれ、そこで与えられた課題を解決する方式をとっていたが、2015年度からは市内10地区のまちづくりセンターに出かけ、地区の町内会長等に話を聞き、各地区の課題を生徒自身が設定して具体的な解決策を考える方式に変更した。それは、課題が与えられた場合、それが自分達にとってのリクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016図表2 課題解決型学習「究タイム」の流れ3年次探究Ⅱ2年次探究Ⅰ1年次探究基礎特集 高大接続改革への「高校の挑戦」第5単元夢夢探究3年次は、ここまでの学習を振り返ることで、気づきや自らの成長を自覚し、将来との繋がりを意識したスピーチの作成を通して、進路意識を高める。第4単元究テーマ研究2年次の後半は、これまで身につけた力を活用して、自分自身で設定したテーマを探究することで、社会問題や自分の将来について視野を広げる。第3単元活地域研究2年次の前半は、富士市の抱える課題に向き合い、解決策を検討し、プレゼンテーションすることで、地域の一員としての意識を高める。第2単元論ディベート1年次の後半は、ディベートにチームで取り組むことで、多角的な見方や論理的な考え方を学び、コミュニケーション力や協働力を高める。第1単元序スキル取得1年次の前半は、ブレインストーミング、KJ法等、課題を見つけ、情報を集め、まとめて、表現するための基本的な方法を学ぶ。
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