カレッジマネジメント198号
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24我々は既に21世紀社会を生き始めているものの、それが今後どのような社会になっていくのか、行く末を正確に予測することは難しい。ICTや人工知能(AI)が世界の形を変えつつある一方、気候変動・食糧・エネルギー・テロ・難民等々、グローバルなレベルで容易に解決できない課題が陸続と起きている。子ども達はそんな見通しの利かない時代を生き抜く力をどうすれば身につけられるのか。既に一部の学校で試行錯誤が始まっている。そこで展開される教育は革新的なものだ。子ども達が教室で学ぶ日常的な風景さえ、20世紀に学校教育を受けた多くの大人達には見慣れない、新鮮なものに見えるに違いない。その新しさ故に、同じ「大人達」である現場の教員にとっても、多くの迷いを抱えながらの挑戦になる。ただそれに取り組む歴史的意義は計り知れない。本稿では、そんな新たな挑戦を続ける「かえつ有明中・高等学校」(以下、かえつ有明)を取り上げたい。かえつ有明は、1903年創立の私立女子商業学校を淵源とし、戦後長く嘉悦女子中・高等学校として知られてきた学校だ。2006年に創立100周年記念の一環として現在の有明キャンパスへの移転と男女共学化を実施し、中高一貫校として現在に至っている。かえつ有明が目指すのは「正解のない問いに対応する力」を育成する教育だ。「21世紀型学習」と総称され、今や入試にも応用される等注目を集める。多様に展開されつつある21世紀型学習の可能性について、前嶋正秀教頭や現場で奮闘する先生方にお話をうかがった。日本ではほんの20年ほど前までは、右肩上がりの社会に適った考え方が主流だった。社会の中での順位がものを言い、次々に目標を設定しそれに向けて頑張ることに高い価値が置かれた時代だった。しかし、今や社会はグローバル化やボーダーレス化が進み、インターネットの登場が情報のあり方を変えた。情報はネットで検索すれば誰でも手に入る時代になり、先生だけが情報・知識を持っているというのは過去の話になった。教育は大きな曲がり角に立った。大学入試をめぐって厳しい競争が機能した時代には副次的に得るものがあったが、1990年代には競争が緩和された。他方で、塾や予備校の教育産業が高度に発展し、子どもの教育をフォローする環境の整備が進んだ。そんな状況下、子ども達は自分で考えることをせずに、与えられるのを待つことが多くなった。企業からは、新入社員が言われたことしかやらないという不満も聞かれるようになった。本当にこれでいいのか。結局、教育がそんな状態を生み出してきたのではないか。教育の根本的なあり方を変えていく必要性を痛感するようになったと先生方は語る。では、どのように教育を変えてきたのか。それは何より、海外の教育にあって日本の教育にない「クリティカルシンキング」を日本の教育に埋め込むことだっリクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 201621世紀型の学習と入試で育むクリティカルシンキングかえつ有明中・高等学校C A S E2社会変化に即して「21世紀型学習」へ転換DATA【学  科】普通科【創  立】1903年【生 徒 数】479人(男子259人・女子220人)【進路状況】大学139人、その他20人(2015年度実績)

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