カレッジマネジメント198号
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26リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016では、そんなビジョンを掲げるかえつ有明の教育実践はどのようなものだろうか。同校の特色の一つは、中学校の「サイエンス科」だ。教科を超えて学び、クリティカルシンキングを育成する教科横断型カリキュラムだ。従前の総合学習をサイエンス科に変えたことが現在も続く改革の端緒だったと前嶋教頭は説明する。この「サイエンス科」では、教科学習に必要な基本的なスタディスキルを身につけ、適切に他者に伝えるためのトレーニングが徹底して行われる。そこで重視されるのは、正解そのものに到達することではなく、「答えを導き出すためのプロセス」を磨くこと。論理的思考力を駆使して課題を解決していくことが目指される。ここで習得した論理的思考力は、高校の「総合学習」でさらに発展・応用が図られることになる。もう一つ、高校の「プロジェクト科」も特徴的だ。従来の講義形式の授業ではなく、生徒達が能動的に学習する、まさにアクティブラーニングの授業だ。図表1にある通り、①課題の設定→②情報の収集→③情報の整理・分析→④情報のまとめ→⑤創造的な表現という流れで進められる。このプロセスを通して、知識や経験に基づいて論理的に考え、自分なりの考えを表現し、相手に伝達できる総合的な能力の伸長が目指されている(図表1)。こうした教科横断型のアクティブラーニングを支える基盤となるのが、「ランゲージアーツ」と「リベラルアーツ」だ。「ランゲージアーツ」には、英語の論理的技術の習得から、議論・ディスカッションの作法、作文・レポートの書き方、文学作品の読み方まで、広範な言語技術の学習が含まれる。その中核は、論理的思考を支えるスキルの習得だ。例えば、英語の論理を端的に示す“I think…because…”のような基礎的構造をしっかり身につけることで、自分なりに思考し、自分の意見を主張できるようになるのだという。こうした考え方の背景には、ランゲージアーツの導入に中心的役割を果たした、山田英雄国際交流部長のアメリカにおける原体験がある。山田先生には、10年ほど滞在した米国で、自分の考えを英語で伝えても理解されなかったという苦い思い出がある。それは決して発音や文法の問題ではなく、ロジックの問題だったと山田先生は振り返る。いくら英語で正しく表現しても、日本人のロジックでは理解してもらえないことがあるという。日本ではロジック構築のためのスキルトレーニングが不十分なのに対し、アメリカでは子どもの頃から5W1Hで整理し思考するスキルトレーニングが徹底され、多様性のある社会を生きていく術が訓練されているという。この経験を通して山田先生は、日本の子ども達の思考停止は、思考の方法を知らないことから来るのではないかと考えるようになる。考えるためのスキルとして言語を教えること。それが「ランゲージアーツ」につながった。では、もう一つの「リベラルアーツ」とは何か。20世紀社会まではとにかく知識を獲得・蓄積し、必要に応じてアウト図表1 プロジェクト科の活動「サイエンス科」と「プロジェクト科」による革新的な教育実践

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