カレッジマネジメント198号
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30リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016学び、ビジネスのプロフェッショナルになる」ことを目指している。高校で質の高い専門教育を行い、高水準に達した生徒を大学に進学させ、大学では先鋭的な教育を行うことで、ビジネス界の核となる人材を育てることを狙いとしている。このプログラムを理念レベルに留めず、制度として形にするために、OBFでは5つの大学(大阪市立大学・関西大学・関西外国語大学・京都産業大学・桃山学院大学)と連携して、一定の水準に達している卒業生を入学させ、OBF、ひいては商業高校卒業生のためのコースを構築している(図表3参照)。例えば新校立ち上げの検討開始当初から連携している関西大学では、ALSP(会計連携特別プログラム)や、BLSP(ビジネスリーダー特別プログラム)に接続している。関西大学では会計専門職大学院も設置しており、理系分野におけるスーパーサイエンスハイスクールのように、ビジネス分野でも先取りして学習できるような高校への期待もあったという。関西大学以外にも、大阪市立大学や関西外国語大学とは、母体校の一つである天王寺商業高等学校が教育的連携を既に進めていたという経緯がある。五代友厚が創立した大阪商業講習所が天王寺商業高等学校のルーツであるが、大阪市立大学も大阪商業講習所にルーツを持つことが、両校の連携を根の部分で深く支えている。高大接続科目による大学水準の授業OBFでは、高校が担うStep1から3に対応する高大接続科目として、「ビジネス基礎」(1年生)、「ビジネスマネジメントⅠ」(2年生)、「ビジネスマネジメントⅡ」(3年生)の3科目9単位を設けている(図表2)。大学の経営学部や商学部での学びに対する準備教育でもあり、ビジネス教育のコアとなる「経営リテラシー」について網羅的に学べる内容になっている。「ビジネス基礎」では、「ビジネスとは何か」から、ビジネスを見る眼を養っていくうえでの重要な事項を学ぶ。「ビジネスマネジメントⅠ」「ビジネスマネジメントⅡ」では、マネジメントの機能から、ビジネスを含む経済についての基礎的な知識や、ビジネスの担い手としての企業や企業の活動に関する法律についての基礎知識、地球規模で経済活動が展開されるグローバリゼーションとの関係を学ぶ。使用するテキストは連携大学の教員により執筆されており、単なる知識詰め込み型の教材ではなく、単元ごとに課題が与えられ、生徒達が協力して解決をせねばならない「探究型」の教育内容となっている。これまでとは異なる発想や指導法が高校教員にも求められることになる。「先生方は『教えたい』という意識がもともと強いと思うが、それを『考えさせたい』という意識に転換させていくことが大切」と澤井校長は言う。執筆者を中心に、連携大学の教員による特別講座も頻繁に行われており、産業界からも講師を招いて、多面的な授業を展開している。さらに、連携大学の特性を活かし、入学後のコースを先取りした講座も開講している(図表3)。例えば桃山学院大学では、OBF生を対象とした「BATIC(国際会計検定)®事前講座」を課業中の土曜日に合計30時間以上実施している。このコースに興味を持った生徒は、桃山学院大学に進学することで、さらに上位の検定、最終的には米国公認会計士・USCPAの資格にスムーズに挑戦していくことができる設計となっている。連携大学への特別入学制度先にも少々触れたが、OBFでは連携している関西大学、関西外国語大学、京都産業大学・桃山学院大学への特別入連携大学連携プログラムの内容大阪市立大学商学部少人数でのゼミナール制度を採用。教員との親密で徹底的な討論を通じて自分で物事を考え、それを明確に表現できる能力を養うために、きめ細かな教育が行われている。関西大学商学部会計連携特別プログラム(ALSP):会計専門職大学院や公認会計士を目指す。ビジネスリーダー特別プログラム(BLSP):少人数の授業で、英語に強いプロアクティブリーダーの育成を行う。関西外国語大学英語国際学部3つの国際力(異文化理解力、国際理解力、グローバル・キャリア基礎力)を身につけ、国際社会で活躍できるグローバル人材を養成。グローバル・キャリア基礎力は、「課題解決力」「チームワーク」など実社会で即戦力として活躍できる就業力の養成を主眼としている。京都産業大学経営学部PBL(課題解決型授業):実体験を通じて経営の手法に触れることで、企画力や判断力、また決断力など社会で必須の力を身につけることができる。桃山学院大学経営学部国際会計コース:企業の経営状態や将来性などを財務諸表やデータから読み取る会計の専門知識を身につける。BATIC(国際会計検定)®SUBJECT2を受験。マーケティングコース:本格的にマーケティングを研究する。図表3 大学との連携プログラムの例

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