カレッジマネジメント198号
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52大学は、最終学歴となる「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングなど座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働など、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取組事例を積極的に紹介していきたい。今回は、今年度(2016年度)新たに1・2・3年次を一貫するキャリア教育科目を開講した桜美林大学で、三谷高康学長、掛川真市キャリア開発センター長(ビジネスマネジメント学群教授)にお話をうかがった。個人のキャリア観を学群の学びに反映桜美林大学は、2005年度から2007年度にかけて学群制に移行した。従来の学部の壁を取り払い、リベラルアーツ学群を例にとれば、自然科学、人文科学、社会科学などの広範な科目を履修でき、第4セメスター(2年次後期)にその中から専攻を選ぶ制度だ。三谷高康学長は「自分が本当に学びたい学問を入学後に選び取ることができ、学生に非常にメリットがあると、私たちは思っていました。ところが、なかなか自分で決められない学生も実はたくさんいたのです」と言う。「物心付いてから偏差値で輪切りにされて振り分けられ、言われた通りに歩んできた。高校の進学指導も、君の学力だったらこの群の大学へ、という形が強く残っている。その結果、明確でなくぼんやりでも、こういう人間になりたいっていうイメージを、持っていない学生のほうが多いのではないかと私は思っています」また、社会の豊かさも、キャリア教育の重要性を高めていると三谷学長は言う。「昔の人は、とにかく食っていかなければならないから、卒業したらすぐに働けるところで働こうと、それが出発点だった。けれども高度経済成長以降、豊かになってくると、難しいチョイスになってきますよね。そういう中で、学生一人ひとりが自分の将来像を早い段階から考えていくことが、キャリア教育の一番大事なところではないか」そして、学生がキャリア観を持つことが学群の学びに反映されることも大きな役割のひとつと考えて、キャリアデザイン科目を作っていったという。1~3年次一貫したプログラム従来、桜美林大学のキャリア科目は、1年次の「自己実現とキャリアデザイン」と、3年次春学期の「キャリアデザインI」、秋学期の「II」となっていた。2年次の1年間が全く空いていたわけだ。内容にも隔たりがあった。1年次の科目は初年次教育ともいえるものであり、3年次は具体的な就職活動のハウツーに近い。その間隙を埋めようということで、2016年度入学生から、1年次は「キャリアデザインA」、2年次になると「キャリ❶ 桜美林大学1年次から3年次まで一貫したプログラムでキャリアを支援三谷高康 学長リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016新連載

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