カレッジマネジメント198号
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58教学と経営の両面において大学職員の役割の重要性が一層増しつつある。このことは今や大学運営に関わる者の共通認識となり、多くの大学で職員の能力の開発や発揮に向けた取り組みが展開されている。しかしながら、教員との関係を含めて、どのような姿をゴールとすべきか、如何なる道筋でその姿に近づけるのかについて、明確な考え方や方法を持ち、戦略的に推進することは容易ではない。試行錯誤を重ねることでしか自校に相応しい解は導き出せないのかもしれないが、いわゆる2018年問題を間近に控え、改革に費やせる時間が少なくなってきたことも事実である。そこで、本稿では実際のケースを通して、職員育成のあり方を多角的かつ実践的に検討してみることとした。取り上げるのは龍谷大学である。事務組織の活性や職員の成長の度合いを計測することは難しく、今後研究すべき課題である。従って、龍谷大学が他の大学以上に職員育成に成功していることを示す客観的データがあるわけではない。職員の育成や能力発揮という面で注目すべき大学は他にもあるだろう。その中で、あえて龍谷大学を取り上げるのは、職員の成長が大学の発展の原動力となり、大学の発展が職員の成長を促すという形でスパイラルアップしてきたケースとして捉えることができ、そのプロセスの中に、職員育成のあり方を考える上での有益な示唆が数多く含まれていると考えるからである。9学部10研究科、学生数2万人の総合大学に発展龍谷大学の歴史は、1639年に西本願寺に設置され僧侶の養成機関「学寮」に始まる。以来、学林、大教校、大学林と名称を変えながら、1922年に大学令による大学となり、龍谷大学と改称する。1949年には新制龍谷大学として認可され、文学部を設置し、1960年に深草学舎を開設して以降、経済学部、経営学部、法学部を順次設置、1989年には瀬田学舎(滋賀県)を開設し、理工学部と社会学部を設置、1996年には国際文化学部を設置するなど学問領域の拡大を図ってきた。近年では、2011年に政策学部を設置、2015年には国際文化学部を国際学部に改組するとともに、新たに農学部を設置し、9学部、10研究科、短期大学部によって構成される学生数約2万人の総合大学に発展している。そのうち、国際学部のグローバルスタディーズ学科は、全員必修の留学、TOEIC®TEST730点の卒業要件化、授業の約8割は英語または英語+日本語といった特色を持ち、農学部については、国内の大学としては35年ぶり、私立大学としては7校目の設置となる。共に、高い注目を浴びてのスタートとなった。2015年5月時点での教職員数は1050人、内訳は専任教員517人、特任教員76人、事務職員258人、嘱託職員199人となっている。事務職員(本稿では「職員」という語を用いる)の7割強は龍谷大学の卒業生であり、事務組織を率いるのが常務理事でもある総務局長である。その常務理事・総務局長を最後に2016年3月に退職した長野了法氏に対するインタビューと同氏の講演記録などに大学を強くする「大学経営改革」職員の成長と大学の発展龍谷大学のケースから職員育成を考える吉武博通 筑波大学 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 20162018年問題を間近に控えて職員育成は喫緊の課題65

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