カレッジマネジメント198号
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2015年に立ち上がった“Education 2030”の原点は、90年代末から6年間をかけて策定したOECDキー・コンピテンシー(主要能力)にある。これはPISA(学習到達度調査)の土台になり、結果として各国のカリキュラム改革にも影響を与えてきた。そして、策定から時間も経ったことで、各国から新たな要望が生まれてきている。一つは、抽象的なキー・コンピテンシーを教室での教育に落とし込んでいくための、よりアクショナブルなコンセプトフレームワークが必要だということ。もう一つは、時代の変化とともにキー・コンピテンシーもアップデートするべきではないかということである。では、今回のプロジェクトが見据える2030年、世界はどのように変化しているのだろうか。オックスフォード大学研究員のカール・ベネディクト・フライは、科学技術の進歩によって、今後10年で47%の仕事が消えるだろうと指摘した。その割合が実際何パーセントなのかは今まさに私達も議論をしているが、オートメーション化により、少なからぬ仕事が消え、一方で次々に新しい仕事が生まれるという動きは確実に起こるだろう。同時にOECDでは、これからは、第一次産業から第二次産業、そして第三次産業へという方向への変化だけが正しいわけではないだろうという議論も起きている。農業や漁業も新しい技術を採り入れることで新しい産リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016将来、必要とされる力をどのように育むか新しい教育のあり方を追求する“Education 2030”田熊美保 OECD教育局 シニア政策アナリスト今、日本を含むOECD(経済協力開発機構)加盟国で、教育改革が共通した課題になっている。各国の要望を受けて、2015年に立ち上がったのが“Education 2030”。世界が大きく変わっているであろう2030年という時代を生きていくために子ども達に求められる力、そしてそのためにはどのような教育が必要になるのかを、加盟国と共に考えていくプロジェクトだ。加盟国からの期待も大きいこのプロジェクトによってOECDが提示しようとしているものは何なのか。世界の教育改革の最新の潮流とその目指すところについて、OECD教育局シニア政策アナリストの田熊美保氏にお話をうかがった。上智大学卒業、ボストン大学大学院修了、フランス国立東洋言語文化大学大学院修了。UNESCO教育セクター、OECD教育局教育研究革新センターにおける外務省派遣アソシエートエキスパートを経て現職(パリ本部勤務)。専門は異文化教育、教育政策国際比較など。OECD東北スクールのカリキュラム設計等にも携わる。教育改革 世界の潮流OECD InterviewOECDが見ている、2030年の未来
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