カレッジマネジメント198号
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連鎖する脚本    手にした1冊のノートをひろげてもらうと、そこには、シーンごとの台本と絵コンテがびっしり貼り込まれていた。自分達の手で映画を作ろうと集まったのが、日本薬科大学・映画研究同好会のメンバー達だ。平成27年2月に設立されたばかりの同会は、最初の作品『レンサ〜リンケージ〜』で、公益財団法人山路ふみ子文化財団の主催する第5回学生映画コンクール・製作部門で〝佳作〞を受賞した。今回、監督・脚本・主演をこなしたのが、杉田安弘さんだ。「他のサークル活動で一緒だったメンバーと、何か新しいことを始めようということで、興味のあった映画作りの会を立ち上げました。とはいえ、メンバー全員が経験もないうえ、カメラやマイクの機材も全て自分達で揃えるところからのスタート。コンクールに応募した動機も、まずは部室を確保できる『実績作り』のためでしたね」。まさに初代のメンバーが土台を築き上げていくプロセスの中での受賞だった。『レンサ』という作品は、ホラーやサスペンス、人間の狂気などダークな面を描きながら、世の中への責任を問うというラストシーンで締めくくられているという。ホームビデオでの画質を考慮し、あえてこうしたホラー的な要素の濃い作品を目指した。「画質や音質が厳しい状態になるのは分かっていたので、手作り感のメリットを出せる内容にしました。場面ごとの演技にも意見を出し合い、出番のない人が照明をやるなど、団結して作り上げた作品になりましたね」。そして表彰式&表彰作品発表会への招待チケットが届く。「発表会の当日は、自分達の演技が恥ずかしくて顔を手で覆っていたぐらい。それでも、この受賞をきっかけに、念願だった部室も頂けたので、第1ステップは全て実現できたと思います」。後輩達も次なる目標を語ってくれた。「脚本をどう作るか、その課題をみんなで詰めて作品につなげたいですね。新入部員を増やし、映画を一緒に創る楽しさを伝えていきたいと考えています」。学生自らが立ち上げ、実績を残し、大学の文化活動として引き継いでいく。映画という作品作りを通じて、未来の学生生活をも創造する「連鎖する脚本」を描き続けていくことだろう。 (写真・文/西山俊哉) (左から) 佐伯陽輔さん(編集)、 川口太暉さん(役者) 畑谷百合子さん(役者)、 前田有紀乃さん(役者) 杉田安弘 さん (薬学部薬学科5年) 学生のリーダー 日本薬科大学 映画研究同好会 当代 当代 Vol.60 監督

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