カレッジマネジメント198号
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リクルート カレッジマネジメント198 / May - Jun. 2016く。学校教育でできることもあるが、むしろカリキュラム外で、じっくり時間をかけて何かに取り組むことが人格的な成長につながることは、私自身、OECD東北スクールを通して実感したことでもある。教育改革の「鏡」となるフレームワーク、“Education 2030”“Education 2030”の目的は、世界共通の基準を設けることではなく、各国が教育改革を進めるうえでの「鏡」の役割を果たすことだ。特にカリキュラムの改革は、各国独自の考え方があってしかるべきだと考えている。ただし、ローカルな場でのみ議論をしていると、ステークホルダー同士の利害が絡み、感情的な対立も生まれやすい。そこで、「他国はこのような場合にどうしているのか」「OECDの研究成果はどのようになっているのか」を、鏡を見るように参考にしてもらいたい。そこにこそ、国際的な枠組みで教育について考える意義がある。そのような形で、10年後の各国のカリキュラム改革に貢献したいというのが私達の思いである。日本の教育改革から得た知見を世界へ発信してほしいそのために今求められているのは、現場の知だ。日本の教育現場でも数々の素晴らしい実践が行われているが、私達が日本の教育関係者と接する中で感じるのは、現場の先生方と研究者との間に距離があることだ。フィンランド等では、現場の先生が研究にも携わっており、現場の成果をOECDでも吸い上げやすい。日本の先生方にも、もっと研究の領域に足を踏み入れてほしい。私達は教育現場にこそ解があると信じている。今後、日本の学校現場に期待したいのは、開かれたチームワークを構築していくこと。例えば高校で、先生同士が教科を超え、学校を超えて交流すること、あるいは大学や地域と交流することで、現場の知をブラッシュアップして頂きたい。大学に対する期待も同様だ。他の大学や企業等、異質なものとの交流を通して、どのような新しいものが生まれてくるのか。その成果をぜひ“Education 2030”にも反映させていきたいと考えている。そのため、OECDと大学等が連携した共同研究もいくつか進行している。東京大学を中心に他大学や企業も加わった産学コンソーシアム「OECD日本イノベーション教育ネットワーク」では様々な先進的な事例を集めているし、東京学芸大学とのプロジェクトでは、新しい教育の実践をビデオライブラリーとして収集・研究している。現在日本で検討が進んでいる教育改革は、OECDが“Education 2030”で目指そうとしている世界とも方向性が合っており、各国からの評価も高い。この改革を世界に先駆けて成功させ、その現場から得た知見を、ぜひ世界に対して発信して頂けることを期待している。(まとめ/伊藤 敬太郎)価値観を根底に、態度や資質、感情等から 構成される「人格」「人間性」。 例えば、美を感じる力 下の知識・技能を発展的に生かすための 「応用力」や「活用力」。 創造性や論理的思考力等に代表される 様々な教科や領域・分野における 「知識」と、それを仕事や生活の場面で 「実践的に利用する力(技能)」 Helvetica LT Stn Bold, Roman 特集 高大接続改革への「高校の挑戦」「第18回OECD/Japanセミナー」(2015年12月)のアンドレアス・シュライヒャー氏(OECD教育局局長)基調講演資料より。いずれも2015年時点での議論に基づく概念図(図表2、図表3ともに)図表3 2030年の社会を生きていくために必要な力

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