カレッジマネジメント199号
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30日本の中心部に位置する長野県は大きく、周囲8県と隣接している。長野県と称しても、地域ごとの歴史や文化は異なり、それらを1つの県民性としてまとめることは困難だ。しかし、高等教育機関に関していえば、第二次世界大戦後の1府県1国立大学制度のもとで、戦前期に県内それぞれの地域特性に応じて設立されていた8機関が統合され、信州大学となった。その折にも、新制国立大学の多くが県名を用いている中、長野県の場合は「信州」とすることで、ようやく県域全体を包含する名称として受け入れられたのだという。信州大学の本部は、旧制松本高校や松本医学専門学校が存立していた松本に置かれたが、それぞれの地域と密着した機関はそのままそこの地域に置かれ、図表1に見るように現在5つのキャンパスから構成されている。学部構成でいえば、松本には人文学部・経法学部・理学部・医学部の4学部が置かれ、長野には信越本線を挟んで工学部キャンパスと教育学部キャンパスがあり、上田には繊維学部、伊那には農学部が置かれている。各キャンパスを移動する時間および金銭面の負担も大きい。これをコストと考えれば、見えてくるのはデメリットである。しかし、大きな長野県に点在するキャンパスが、それぞれの地域の特性に応じて設置された旧制の教育機関であった歴史を思い起こせば、点在するキャンパスは長野県全体に根を張るための各地域の拠点として見ることができ、それはメリットになる。「松本に一極集中していては決してできないことが、分散キャンパスだからできるのです」と、濱田州博学長は話される。大学のミッションに、それまでの教育・研究に社会貢献が加えられるようになったのは、1990年代以来の大学改革の中でのことだが、信州大学の各キャンパスの立地を考えると、立地する地域への貢献を明瞭に意識していたか否かは別にして、地域との結びつきを抜きにして各キャンパスは存立し得なかったといってもよいだろう。マルチキャンパスとは、地域との結びつきの強さの証左のようなものである。それを明確に大学の戦略として形にしたのは、1993年のリクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016地域に根を張り世界へ広がる長野(工学)キャンパス 長野(教育)キャンパス 上田キャンパス 松本キャンパス 伊那キャンパス 教育学部 工学部 全学教育機構人文学部経法学部理学部医学部医学部附属病院繊維学部 農学部 附属長野小学校 附属長野中学校 附属特別支援学校 長野附属学校松本附属学校園附属松本小学校 附属松本中学校 附属幼稚園 長野市 松本市 上田市 南箕輪村 至 東京 至 名古屋 至 新潟 至 群馬 飯山 長野 上田 松本 塩尻 岡谷 諏訪 伊那 飯田 図表1 5つのキャンパス長野ではなく信州地域連携前史信州大学C A S E1

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