カレッジマネジメント199号
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34地方における私立大学の経営困難が目立つようになって久しい。一概には言い切れないが、資格偏重やラーニングアウトカム重視の風潮からすると、相対的に厳しく見られがちなのは文系大学ということになる。しかし地方を支える人材は必ずしも技術・資格系に限らず、皆が技術一辺倒になっては肝心の経済を担う人材がいなくなってしまう。一方で、都市部の大学が地方の高学力層を対象にした奨学金制度を整備し、ガイダンス等にも遠征するようになった昨今、本来地方経済の根幹を担うべき優秀な人材が地方から流出する動きも加速している。結果として人材の多様化が進み、大学にはさらに難しいかじ取りが求められるようになった。こうした状況のなか、どのように地域経済への人材育成・輩出を担うのか。熊本市に拠を構える熊本学園大学で幸田亮一学長にお話をうかがった。昔から熊本県は、大陸に近いこともあってか、海外を志向する気運が強く、様々な団体や集会で、日本の外交政策を議論するような土地柄だったという。そんななか、1918年に民間の通商団体「熊本海外協会」が生まれ、その後時勢に呼応するかたちで、中国語学校を設立。それを母体に、「県民のためにもっと大きな学校を」との要請に呼応して1942年に誕生したのが、東洋語学専門学校(後の熊本学園大学)である。「つまりもともと、外国語を使ってビジネスを行う人材の育成を目的にした学校であり、それが当時の地元経済地域経済に始まり地域経済を支える界が求めていたことだったのです」と幸田学長は話す。1954年に、そのルーツを発展させるかたちで熊本商科大学となってからは、南九州唯一の商科大学として、地銀をはじめとする地元金融業界との強い関係を築き、熊本を中心に9.3万人もの卒業生を輩出してきた。熊本では「一家に1人、親戚に1人」は熊本学園大学卒業生がいる状態だ。まさに名実共に、地域経済を担う人材を送り出してきたと言えよう。図表1に見るように、熊本県内企業の社長数もNO.1の実績を誇る。一方、昔から熊本は阿蘇山や有明海等大自然の恵みを享受し、農林水産業が強い県であったが、1980年以降は製造業が多く立地するようになった。根差す産業が増えれば当然求められる人材ニーズも多様になる。こうした地域のニーズや課題を解消する学部学科を増設し、現在では、商学部・経済学部・外国語学部・社会福祉学部(第一部・第二部)の5学部12学科を擁するまでになった(入学定員1365名)。規模は拡大しても、県内就職者は全体の6割を超える。また、同窓会「志文会」による影響力も大きく、こうした歴史的に地元を支えてきた関係性とネットワークは今も日々強化されている。「まさに私立大学というより、地域立大学と言うべき」と学長は称される。特に定員規模の大きい大学に共通する悩みとして、学幅広い入学者層に対応した学内体制リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016地縁の最大化で地元経済を支える幸田亮一 学長熊本学園大学C A S E2

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