カレッジマネジメント199号
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44そもそも職員の位置付けや育成が中教審の重要なテーマとして浮上してきたのは「大学ガバナンス改革の推進について(審議のまとめ)」(2014年)である。「『高度専門職』の設置や恒常的な大学事務職員のスキル向上のためのSDの義務化等、今後、必要な制度の整備について法令改正を含めて検討すべき」。この提起がなければ大学設置基準改訂にまでは至らなかった。学長への権限付与、教授会の役割の教育・研究への限定等の学校教育法改訂を方向付けたこの「審議のまとめ」は、一方で、それを実質化し真の学長のリーダーシップを確立するためには、職員の力を育成し職員の位置付けを高めることが不可欠の要素だと、当初から考えていたということだ。職員の役割の重要性は古くから指摘されてきた。「学長の責任と権限を明確にし、トップのリーダーシップとそれを支える事務局・職員の強化による改革推進」。これは1998年の有名な答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」の中での提起だが、20年近く前の方針が漸く具体的な実行措置を伴って現実化されたとも言える。直近の答申等でも、2008年の「学士力答申」や2013年の「質転換答申」で繰り返し同様の提言がされた。しかし、方向性は提示されても目に見える改善措置はとられてこなかった。今回それが初めて法改訂となり、また今後の改革の方向を明示し、現実改革を一歩進めたことを私は高く評価したい。中教審の議論の最終取りまとめ、大学設置基準改定の基礎となった「大学運営の一層の改善・充実に向けた方策の必要性について(取組の方向性)(案)」の結論を図表1に簡潔にまとめた。議論の焦点は何処にあったかリクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016大学設置基準改正これからの大学改革の核、SD・職員力の飛躍篠田道夫 桜美林大学教授、日本福祉大学学園参与中央教育審議会大学分科会大学教育部会委員寄 稿職員の資質・能力の向上「法令において、大学が、大学運営に必要な職員の資質・能力の向上を図るため、当該職員の研修について計画し、その機会を確保することについて規定する」専門的職員の配置「大学運営の高度化を図っていくためには」「教員、事務職員等の業務の垣根を越えた専門的な取組が新たに必要」だが「専門的職員に求める資格、処遇等について未だに確立されたものにはなっていない状況」にあり「現時点においては」「情報収集や環境整備に取り組み」「法令上の規程についてはさらに検討」する職員の位置と役割「学長のリーダーシップに基づく戦略的な大学運営の実現に向け」「事務組織及び事務職員の役割の重要性は一層高まっている。一方、現行の事務組織は大学設置基準上単に事務を処理することが目的とされているなど、事務組織及び事務職員に対する期待の高まりやその役割の重要性等に必ずしも対応するものとなっていない」「事務組織及び事務職員が」「これまで以上に積極的な役割を担い、大学運営の一翼を担う機能をより一層発揮できるよう」「さらに検討を深め、その結果を法令等に反映させる」図1 中教審の議論の結論「大学運営の一層の改善・充実に向けた方策の必要性について(取組の方向性)(案)」中央教育審議会・大学教育部会(第42回)配布資料より中教審で職員が議論になった意義

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