カレッジマネジメント199号
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47リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016これらを総合すると専門的職員は、図3のような2つの特性に分けられる。中教審の提起する2つの機能に即して整理すると、第1の機能がゼネラリストの要素を持つアドミニストレーター、第2の機能がアカデミック・アドミニストレーターとなる。この2つの専門職が、連携し協働することなしに、大学教学の質向上とその推進マネジメントは実効性を持つことはできない。今回改訂された大学設置基準の第42条3項(研修の機会等)で、最も注目すべきは「職員に必要な知識及び技能を習得させ」るのは、「当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため」であり、事務処理の迅速化や効率化(もちろんこれも必要であるが)ではないという点だ。SDならもう十分やっていると年数回の定型的な業務研修を上げる大学もあるかもしれない。しかし改訂設置基準が求めているのは、教育研究そのものの質向上や高度化支援、教育・学生支援力の育成にある。入口(学生募集、入試)から、教育・学修支援、学生生活の充実、そして出口(資格取得やキャリア形成支援)に至る学生育成への職員の関与を深め、また教員を動かして教育の質向上を作り出す職員力、教学マネジメント力が求められている。「大学」設置基準なので、経営や総務、財務職務については直接触れていないが、教育研究の効果的な運営や資源投下力量を高め職員力を発揮するために大学設置基準の改訂をどう読むかを図るこれらの分野の力量向上も当然に対象に入る。設置基準改訂の省令通知の留意事項では、SDには事務職員だけでなく教員等大学執行部も含まれるとするが、教育研究をマネジメントする大学行政管理能力の育成は、教職の幹部集団一体で行われるべきである。またSDは、各大学の実態や目的を踏まえて行われるが、その際「計画的、組織的」な取り組み、そして「職員の研修の実施方針・計画が全学的に策定」され実効性あるものになっているかどうかが求められている。職員を育てる、力をつけるSDとは、研修制度の充実のみではない。本物の力を付けるのは図4に示した力量向上のトータルシステムが必要だ。もちろん学内研修制度の充実は必要だ。年1〜2回程度の知識習得型研修ではなかなか力はつかない。演習・討議などアクティブラーニングの手法や、年代別・テーマ別などの体系化、実際の業務を素材にする実戦形式等の工夫がいる。個人の研修計画の立案と資金面や勤務上の配慮なども重要だ。人事考課制度も48.1%の大学に導入され(私学高等教育研究所調査、2010年10月『財務、職員調査から見た私大経営改革』以下私高研調査)、資格基準や職務レベル、育成システムを明確に設定し上級管理者育成を系統的に行っている所も出てきている。例えば『私学経営』誌に紹介された龍谷大学、関西学院(2015年5月号)や京都産業大学(同4月号)等の事例である。しかし一方、同私高研調査では、評価制度はあるが面接がない所や評価と育成が結びついていない所も半分近くある。査定型評価では育成に効果が少ない。求められているのは企画・開発力や学生育成支援力であり、目標を明確に主体的行動を促すものに進化させねばならない。その点では、目標管理制度、年間業務に目標やテーマをSD、職員の育成制度の構築図3 大学における専門的職員(専門性)の2つの特性<目的>大学のミッション・中長期計画の目標達成機能学長が適切なリーダーシップを発揮するための支援・補佐機能大学の教育・研究の高度化を推進・支援する機能名称アドミニストレーター・大学行政管理職員アカデミック・アドミニストレーター・学術専門職員職務水準大学の戦略、総務・財務・人事・組織運営・教学についての深い知識と実践経験、改革を主導した実績教育研究に対する高度な専門知識や資格、学位、経験を背景にした教育研究高度化、学生育成・支援の実績・成果特性・任用ゼネラリスト(スペシャリティを持った)全体最適 安定性・継続性内部登用(昇格)が主流スペシャリスト(ゼネラルな基礎知識を持った)部分最適(どちらかというと)、流動性もあり内部昇格・外部採用の双方*冒頭の2つの機能は中教審・大学教育部会の提起を踏まえて作成。

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