カレッジマネジメント199号
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53のように倍率差が大きな状況にはなっていないといえる。スケジュール変更によって学生の希望に変動が見られるなかで、従業員規模間のミスマッチは依然として見られる。学生にとって就職環境は良くなっているが、企業の採用活動を見ると、充足できない企業のうち、応募が集まらないから充足できないのではなく、採用基準を満たない学生までもあえて採用しない企業も見られるため、全ての学生にとって楽に就職できる状況ではない。多くの学生が希望通りの就職を果たすためには、従業員規模間のミスマッチを課題として捉え、解消していくことが求められる。図表5には、業種別の求人倍率を示している。流通業、製造業、建設業において前年より上昇しているが、特に顕著なのは流通業の大幅な上昇である。流通業の2016年卒の倍率が5.65倍であるのに対し、2017年卒は6.98倍とほかの業種よりも高い求人倍率となっている。調査開始以来の最高値(2008年卒の7.31倍)には達していないが、それに匹敵する水準である。一部の流通業では労働時間などの働く環境が厳しいという認識が学生に広がっており、学生の志望として流通業以外に目が向いていることが背景にある。流通業の倍率が大幅上昇リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016以上のように、企業の採用意欲は依然として高く就職しやすい環境になっているが、企業は採用基準を下げてまで学生を採用しないことをふまえると、全ての学生にとって就職しやすいとは言い切れない。また、採用スケジュールの変更に柔軟に対応し採用活動を行う企業の姿勢もうかがえる。こうしたことからも、今が依然として続いている従業員規模間のミスマッチを解消するチャンスであると捉え、新卒採用に携わる者は、これまで以上に学生に中小企業に目を向けるような指導やアドバイスをしていき、多くの学生が希望通りの就職ができることが望まれる。図表5 業種別 大卒求人倍率の推移(倍)2017年3月卒2016年3月卒2015年3月卒2014年3月卒2013年3月卒2012年3月卒2011年3月卒2010年3月卒2009年3月卒2008年3月卒2007年3月卒2006年3月卒2005年3月卒2004年3月卒2003年3月卒2002年3月卒2001年3月卒01234567891.350.370.440.440.490.400.350.350.350.370.390.350.210.200.190.190.180.220.230.190.450.450.500.610.720.750.670.480.470.420.410.540.560.490.443.484.494.394.694.495.296.387.317.154.664.145.044.955.324.775.616.186.254.173.943.734.765.495.656.981.691.621.591.631.932.332.642.641.971.661.351.271.371.311.591.731.93サービス・情報業金融業流通業製造業建設業建設業・製造業他

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