カレッジマネジメント199号
54/70
54大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニング等座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働等、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあると言えるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取組事例を積極的に紹介していきたい。今回は、「コンピュータ理工学部」の1学部1学科という独特の組織からなる会津大学で、岡 嶐一学長にお話を伺った。「会津大学のユニークさは統計量で見たほうが分かりやすいと思うのです」と岡 嶐一学長は語り始めた。「まず1つは、理系では外国人の教員4割が外国人教授のIT専門大学が多い。設立当時は60%ぐらいでしたが、現在でも40%の外国人の方が先生としていらっしゃいます。言ってみれば、国際性が日本の中において確保されていると。もう1つは、学生数で見て情報工学科として定員が240名。IT専門の学科として日本一大きいです。学科ですよ、学部や大学ではなくて。それから、学生や卒業生が立ち上げるベンチャーの数が多い。1000人以上の規模の大学で、在籍の定員に対する割合でいうと日本で一番大きい(2014年1月時点)」。教育上の特徴としては「英語力」「プログラミング」の重視がある。英語教育では、例えば学部生の卒論、大学院生の修士論文共に、全て英語で作成・発表することとなっている。「理系では英語というのは道具ですから、それほど偉い話をしているわけではないのですね。TOEIC®とかTOEFL®の点数に表れなくても、英語で話すこと聞くことに抵抗感がなくなればいいというのも、大学の英語に対する考え方です」。プログラミングに関しては、集中的に効率よく学べる体制を整えるとともに、学外のコンペやコンテストへの参加を奨励している。「ACM-ICPC国際大学対抗プログラミングコンテストには毎年参加していますが、今年は予選を勝ち抜いて世界大会に進みました。ほかに日本から世界大会に出たのは、東大、阪大、京大の3校。それに比べて会津大学は小さい大学です。それでもそこまで上れるのです」。「息を吸うようにプログラミングをこなす学生が結構いる」と岡学長は言う。そういう優秀な学生を入試の段階で見つける仕組みがあるのかと問うと、岡学長は「いや、見つけてはいないのですよ」と即答した。「会津大学の入試偏差値はそれほど高くない。受験の価値観にもまれてなくて、入ってみたらいろいろな機会があって伸びるという子どもさん「小さな成功」が学生を成長させる❷会津大学グローバルな教育環境で、IT業界で通用する人材育成岡 嶐一 学長リクルート カレッジマネジメント199 / Jul. - Aug. 2016
元のページ