カレッジマネジメント200号
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10リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016山崎 石川県の能登半島は、日本の中でも少子高齢化が特に進んでいる地域の一つですが、先端にある珠洲市の高齢化率は46〜47%です。実はそこに廃校を活用した私たちの能登キャンパスがあります。そこで地域の課題とその解決に向けて、先生・住民・企業を巻き込んで取り組んでいます。例えば七尾市と本学とは5つの課題の解決に向けた委員会を組織し、毎年進捗状況を確認しています。田舎では病院や買い物にいくうえで車は重要な手足なので、珠洲市では自動運転の普及を目的にした社会実証研究も推進しています。大学としては世界を目指す一方で、地域の課題にも真摯に目を向け、教職員が一丸となって取り組み、先進事例を作っていきたいと考えています。近藤 問題となるのは地域社会と大学の距離感でしょう。本学では地域と大学の距離を超えるために、地域創生学群や地域共生教育センターという新しい教育組織を開設しました。学群では、学生が学外に出て、地域固有の課題に地域の皆さんと取り組むという教育プログラムを導入しています。例えば、八幡東区猪倉地区の過疎化が進んだ地域では、学生たちが農業関連プロジェクトに取り組み、泊まり込みでやり始めてから5年になります。これも地方創生のあり方を考えていく取り組みです。その一環として耕作放棄地でサツマイモを栽培し、市の特産品を作ろうと地域の酒造メーカーに相談し、市と地域と学生が協働して芋焼酎の製造につなげました。教職員が地域に入ることと同時に、学生が入っていくことも地域との連携を深めるために必要なことだと思います。田中 地域と大学の関係ですが、首都圏の大学として法政大学が力を入れているのがフィールドワークです。もともと先生方も外で合宿や調査をする方が多いのです。これからは海外のフィールドワークはもちろん、国内でも地域と提携したフィールドワークを奨励したい。今のお話は大変興味深いですし、地方の大学と一緒に何かができるはずだと思っています。首都圏の大学にとってフィールドワークは重要な教育の方法です。セメスター制・クォータ制に変わっていくなかで、春休み・夏休みをスプリングセッション・サマーセッションとして、正規の授業にしていく方法があると思います。教職員の教育力司会 これまでは偏差値を軸に入試を受け、入学がゴールという「入学の国」でしたが、入学後の学習成果が求められる「卒業の国」に向かう動きが生まれてきています。学習の成果を上げ、学生の成長を促すためにどのように取り組んでいますか。田中 学生が養うべき能力に関しては、文科省が能力の基準を変えました。その中の思考力・判断力・表現力は非常に重要な能力ですが、そうした能力開発はそもそも大学の教育でやってきたことです。しかし、それが入試と結びついておらず、全学的体制で取り組んでいなかったという問題があります。全学的にやるには教育方法を全面的にアクティブラーニングに変えないといけません。大教室スタイルの講義も、議論型・プレゼンテーション型に変える必要があります。 また、求められる能力の基準が変わると、大学教育と同時並行で高校の教育も変えなければなりません。小・中学校も含めていよいよ教育全体の方法、能力の考え方が変化する時期に来ている以上、グローバル化を含めて能力について私たちがしっかりとした考えを持つべきだと思っています。司会 そうなると教員も職員も変わっていかないといけませんね。教育力を高めていくためにどういう取り組みをしていますか。山崎 私どもは以前からアクティブラーニングを取り入れている大学の一つですし、かなり先行しているという自負も持っています。また、本学学生のブランディング力を打ち立てようということで、昨年から育成する人材のモデル像を5つのスタンダード(能力)で設定し、教養教育から作り直し、2016年4月から実践を始めています。これら5つのスタンダードをKUGS「金沢大学グローバルスタンダード」と呼んでいます。例えば5つの中には「自己の立ち位置を知る」、つまり日本と世界の歴史や地理を理解するというものがあり、そのスタンダードのために6つの独自科目がある、といった具合で、5つのスタンダード全体で30科目程度を用意しています。基本的にはアクティブラーニングですが、それぞれ教材を独自に開発しました。我々としては5〜10年後に、最近の金沢大学を卒業した学生は変わってきたよね、と言われるように

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