カレッジマネジメント200号
11/84

11リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016したいと思います。 そのために教育方法も見直し、一部は英語による授業を開始し、10年後には学士課程の原則50%・大学院の100%を英語で教えることにしています。また、留学生を増やすために、英語だけで学位が取れるコースのカリキュラムを作っていきたい。そのためにアメリカのタフツ大学から数人の先生を招聘し、本学の先生方向けに英語教授法に関する教員研修をやってもらっています。授業のない時期に集中的に開講しているもので、宿題も多いので、受講している先生方は悲鳴を上げていますけれども。また、タフツ大学の先生方には職員向けに業務に役立つ英語研修や学生の英語の授業も担当してもらっています。トレーニング専門の先生方なので教え方が上手く、学生の評判も高いです。近藤 これまで先生方は研究のプロフェッショナルとしてやってきましたが、やはり教えるということを真摯に受け止めないといけないと考えています。本学では12年前に法人化した後、FDの特命教授を外部からお招きしました。先生を教えるための先生です。50〜60代の先生に教えようとしても嫌がる方もいますので、最初は新任の先生たちに研修を行う仕組みを作りました。それから約10年経ちますが、3分の1の教員がそうした研修を受けた状態になりました。ある程度そうした母数が大きくなってくると、例えば、アクティブラーニングの取り組み等、大学内でも様々な教育文化が育ち始めます。FDのベストプラクティスを先生方が競い合うようにもなってきました。 同時に教育の成果をどういう形で見るのかという問題があります。一昨年に文科省のAP事業に採択されたのに合わせて、この問題にも取り組んでいます。学生はどのように成長していくのか、また、学習の成果をどういう形で発信していくのかという観点から、地域創生学群では1年次から学生自身が自らの学びを自己評価する取り組みを実施しています。司会 大学が個性を明確にして人材育成に対してコミットし、社会に輩出していこうという取り組みについて、どう考えていますか。吉武 良い動きがたくさん出てきていると思います。ただし、気になるのは供給者の論理が強いことです。つまり、「こういう教育をしているから良いはずだ」というものです。でも学生にとってはどうなのでしょうか。つまり、実際に大学にはどんな学生がいて、どんな学習をし、その結果どういう成長をしているのか。さらに社会は一体どんな学生を求めているかということを含めて、学生の立場に立って自分たちの教育はどうあるべきかを考えている大学が意外に少ないように思います。 もう一つは、熱心に教育に取り組んでいる教員の間でも、社会が何を求めているのかに関しては、社会が求める通りにやっても仕方ないと考える教員もいますし、社会が求めることを重視して教育を行なうべきだと考える教員もいる。こうしたいろんな考えを含めて社会と対話しながら、最後は大学が主体となってこういう能力を身につけさせるべきだということを議論し、大学の教員の間で共有するプロセスが必要だと思います。エビデンスも大事ですが、必ずしも全て定量的に計れるわけではありません。それでわかるのは2〜3割の部分かもしれませんが、それを参考にしながら学生と皮膚感覚で接触していくことが大事だと思います。何のために教育するのかという問いに明確に答えることは難しいと思いますが、常に教職員が社会との対話を通じて議論するというプロセスが、教育力を上げていくことになるのではないかと考えています。近藤 大学は学生が卒業する時に成績証明書を出していますが、それでは不十分だと思います。企業・社会が学生にどういうものを求めているのかを踏まえ、大学の教育によって、学生がどのような能力を身につけたのか、つまり、学位授与方針に基づき、責任を持って学修成果を証明する必要が外部環境に翻弄されすぎないためにも、正しい現状把握を基盤にした長期ビジョンが必要。(田中)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 11

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です