カレッジマネジメント200号
15/84
15リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016生を呼び込むことに成功した。特に社会科学系では、1年制の修士コースが北米の有力大学との競争において重要な役割を果たした。38のそれぞれに独立したカレッジの連合体であるオックスフォードが、学部教育においてはカレッジの伝統を維持しつつ、カレッジの影響力から離れて、その連合体の運営管理を行うUniversityが、新設の大学院プログラムをスピード感を持って増設してきたのである(表1参照)。 外部からの資金集めも国境を超えて行われた。冠名が示すように、サイード・ビジネススクールはシリア生まれのサウジアラビアの富豪から、ブラバトニック公共政策大学院はロシア生まれのアメリカの投資家で慈善家からの資金援助によってその基盤が作られた。グローバルな資金集めによって、グローバル人材の育成に必要な新しいプログラムが作られていったのである。 このような経験から日本の大学を見ると、グローバル化をはじめとする現代的課題への迅速な対応を展開することに四苦八苦しているように見える。と同時に、場合によっては改革を急ぐあまり、これまで培ってきた日本の大学の強みを十分に認識しないままに改革に走る傾向もあるようだ。 日本の大学の多くは専門学部を組織構成の基礎単位にしている。その特徴は、それがカリキュラムのユニットであり、学生が所属する組織であり、しかも教員の所属する組織でもある点にある。この構造的特徴が、スクラップ・アンド・ビルドを要する組織改革の足かせとなっている。 資金集めも国内に限られる。そのため、一定規模の新たな組織を作るのは難しい。限られた資金のもとでは、教員の定数を動かさない限り、新たな組織作りは容易でなくなるが、定数を既存の組織単位から新たな組織に移すことへの抵抗感は強い。そのため、学内での合意形成は困難になる。特に、グローバルな人材市場で進行中の、専門職的な修士課程プログラムの展開という点では、規模の点でもスピード感でも見劣りがする。海外からの優秀なスタッフや学生を集めるにはいたらない。 日本の大学も設置から百年以上の年月を重ねるものがある。にも拘わらず、その伝統と革新との調和あるバランス、融合を図ることは難しい。伝統が改革の足かせとなったり、改革の急が良き伝統を侵したり、こうした伝統と革新の関係が、生産的な緊張感を生むよりも、大学の中途半端さにつながっているように見える国家と大学 前述の通り、オックスフォードは38のカレッジの連合体としてのUniversityと、大学院教育を担当する4つのdivisions(日本の研究科に近い)を管轄するUniversityとの二重構造を持つ。カレッジの連合体としての管轄権を持ち大学院を統括するUniversityに対しては、国からの資金がでている。それ故設置形態としては国立大学の性格を持つ。 他方で、38のカレッジはそれぞれが独立した財源を持つ、国から認定されたcharity(寄付金を受けいれることのできる慈善団体)で、政府から独立した法人としての性格を保つ。カレッジによっては膨大な資産を持つものもある。あえて言えばカレッジは私学的な性格を保ちつつ、Universityの部分は国立の性格を持つ。また全体としても、国からの運営資金の比重は年々減少しつつある。その分、外部資金や寄付金の比率を高めている。このような複雑な組織・財政構造を持つ大学であるが、ポイントは国家からの半ばの独立性である。徴収できる授業料の上限や、研究評価や教育評価等、政府の設定した枠組みへの参加を拒むことはできないが、教育研究面での大学運営についての自由度は高い。 このような点を踏まえて近年の日本の大学を見ると、国立大学は言うに及ばず、私立大学においても文科省の政策に右往左往している印象を受ける。国は財政支援を競争的資金にウェイトを掛けることで政策誘導をしようとし表1 オックスフォード大学の概要(2014年7月31日時点)38のカレッジと5つのdivisionsから構成学部学生数1万1603人 (うち、イギリス人9416人、 日本人22人、中国系391人)大学院学生数1万499人 (うち、イギリス人3896人、 日本人66人、中国系612人)スタッフAcademic 1799人; Research 4536人 うち約35%がUK以外
元のページ