カレッジマネジメント200号
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リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016182008年にリリースを開始した「進学ブランド力調査」が、今年で9年目を迎えた。実は当初、大学の募集課題を発見し、募集戦略に活かすことを目的として、「募集ブランド力調査」という名称で調査設計をしていた。しかし、社会への公表を検討するなかで、やはり主役は学生なのだから、「募集」ではなく「進学」という名称にしようということで、現在の「進学ブランド力調査」になったという経緯がある。現在では、様々なランキングが世に出ているが、この調査は一切係数化や指標化、総合化などを行っていない、高校生の純粋な志願度、知名度、イメージとなっているのが特徴である。単純な調査だけに、高校生の学校選びに社会環境が大きく影響していることが分かる。一つは、国公立志向か私学志向かである。私学志向の強い関東エリア、国公立志向の強い東海エリアと比較して、特に景気の影響を受けやすいのが、関西エリアである。関西エリアは、景気が下振れると国公立志向が上回り、景気回復してくると私学志向が強くなる傾向がある。今年の調査では、私学志向が国公立志向を上回っているので、景気回復基調であると推察される。折しも、先日発表された学校基本調査の結果を見ると、2016年度の大学進学率(過年度を含む)は52.0%と、前年より0.5ポイント上昇した。8割近くの学生は、私学に進学することから、それとなく連動している感じがしている。もう一つは、希望分野の動向である。高校生が進学したいと考える分野を前年と比較すると、3エリア共通で増加しているのは「経済・経営・商」「文学」「人間・心理」「哲学・宗教」の4分野となった。その一方、これまで人気を集めてきた「医療・保健・衛生」や「教育・保育」は3エリア共通で減少に転じている。近年、長引く不況の影響を受け、資格取得が仕事に直結する学部や、理系学部の人気が高くなっていた。しかし、就職状況が改善したことで、文系学部でも就職しやすい環境になったこともあり、文系分野を希望する高校生が増加していると考えられる。個別の大学の状況をみると、これまで外国語大学の独壇場であった「国際的なセンスが身につく」イメージの大学の上位に外国語大学でない大学が入ってきた。各大学の国際化の動きが高校生にも伝わりつつあるのではないかと考えられる。また、全体として、中長期的に大学改革を進めている大学のイメージが変化していることが分かる。今回は志願度ランキングだけではなく、イメージの変化にも注目して、事例校を紹介したい。全体の志願度ランキングが注目されがちである。しかし、実は重要なのは各大学が高校生からどう見られているのか、発信しているメッセージが伝わっているのかだと考えている。(本誌編集長 小林 浩)進学ブランド力調査2016特集

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