カレッジマネジメント200号
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69第2期の学長になってこれまでのところ、特筆すべき改革は他法人との合併を果たしたことである。いくつかの私立大学で異なる法人が合併した前例はあるが、40%を超える私立大学が定員割れをしているにも拘わらず、法人の合併によるサバイバル戦略をとるところは多くはない。ただ学生定員を増やせば規模の経済が働くというものではなく、法人の特性の類似性、財務状況、学部構成、学生の資質など多様な条件を考慮する必要があり、安易にそれを選択することはできない。そうしたなか、大学と修道中学校・高等学校からなる学校法人修道学園は、合併という道を選択した。相手は女子短期大学と女子中学校・女子高等学校を持つ鈴峯学園であった。協議の開始は2013年3月、合併の認可は2015年1月であり、およそ2年の歳月をかけて合併に至った。図表1にみるように、鈴峯女子短期大学は保育、食物栄養、キャリア創造という3学科を持っていた。これらはいずれも、広島修道大学にはなかった領域である。合併による規模の拡大と、新領域への進出とを同時に果たすことで、これまでとは異なる受験者層を取り込める可能性が広がる。まず、2016年には、それまでの人文学部人間関係学科教育学専攻と鈴峯女子短大の保育学科を活用して新たな教育学科に再編し、小学校・中学校・高等学校の教員免許に加えて、幼稚園・特別支援の教員免許及び保育士資格を取得できるようにした。2017年には健康科学部の開設が予定されているが、そのうち健康栄養学科では管理栄養士の受験資格が取得でき、人間関係学科心理学専攻を改組した心理学科では大学院修士課程において臨床心理士の受験資格の取得を視野に入れている。2018年には国際コミュニティ学部を設置し、一方でグローバルを視野に置き、他方で地方創生を担うような人材育成を目指すことを構想している。これが実現すれば総定員は5040人から5660人へと約12%も拡大する(図表1)。教員、管理栄養士、臨床心理士といった資格は、女子に人気が高い。また、国際関連の領域もしかりである。既存の広島修道大学には、確かに人文学部はあるものの、最近、女子高生やその保護者に人気のある資格系の学部を持たないため、女子比率が減少傾向にあった。そこにあらたな学生マーケットである女子の取り込み、附属女子高校からの進学による入学者の安定的充足、こうして一層進む少子化時代を生き抜こうという戦略をとった。「県内の他大学は既に新学部を設置しているため、後発であることの不安がなかったわけではないです。しかし、鈴峯学園の財務状況に問題はないしロケーションはよい。広島修道大学は、地域で築いてきた伝統がありますし、広島修道大学ならばどの学部でも良いから進学したいという層がいます。これらから、後発のリスクは回避できるのではないかと考えての合併でした」と、市川学長は話される。1992年以降の最高志願者数にその結果、まずは「吉」とでた。図表2にみるように、2016年合併・改組後の初の入試では、前年よりも入学者定員が50人増えているなか、入学志願者は前年に比して約3000人、36%の増加である。志願倍率は前年の5.5倍から一挙に7.2倍にまで跳ね上がった。2000年代後半には6倍を超えていた志願倍率が、2010年代に入って逓減し5倍台半ばにまで下がっていたところでの7倍を超える志願倍率は合併・改組効果以外の何ものでもない。これは、1992年以降の最高の志願者数である。リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016図表1 広島修道大学組織図2014年鈴峯学園との合併協定締結2018年計画広島修道大学 (総定員5040人)商学部 商学科・経営学科人文学部 人間関係学科・英語英文学科法学部 法律学科・国際政治学科経済科学部 現代経済学科・経済情報学科人間環境学部 人間環境学科修道高等学校修道中・高等学校鈴峯女子高等学校修道中学校広島修道大学附属鈴峯女子中・高等学校鈴峯女子中学校鈴峯女子短期大学 (総定員580人)食物栄養学科保育学科キャリア創造学科     2016年度学生募集停止広島修道大学 (総定員5660人)商学部 商学科・経営学科人文学部 人間関係学科・ 教育学科・ 英語英文学科法学部 法律学科経済科学部 現代経済学科・ 経済情報学科人間環境学部 人間環境学科健康科学部 心理学科・ 健康栄養学科国際コミュニティ学部 国際政治学科・ 地域創造学科(2017年4月設置認可申請中:2016年7月現在)(2018年4月設置構想中)20162016特集 進学ブランド力調査

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