カレッジマネジメント200号
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71リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016(吉田 文 早稲田大学教授)なったことは特筆に値しよう(図表3)。これらいずれの改革も、職員であっても教員と同等にマネジメントに参画し、大学経営に力量を発揮することができるシステムへの変更である。それは言い換えれば、事務職員がそのくらいの力を持たないと今後の大学経営は成り立たないとの判断があってのことであろう。学長は、これを「インナー・ブランディング」と呼ぶ。大学の外からの評価でもってブランド力を向上させることを、仮に「アウター・ブランディング」とすれば、学内マネジメントの改革によるブランド力の向上を、それに勝るとも劣らない重要な戦略と位置づけてこのように命名されるのであろう。いや、後者を実現させるためには前者が不可欠なのだ。事実、こうした改革を経て、「職員の職務に対するモチベーションは明らかに高まり、意思決定のスピードが違ってきました。物事が早く進むようになりました」と、市川学長は改革の成果を実感されている。大学の事務組織や事務職員の処遇に関する改革は、大学の外からは見えにくいうえ、それが注目を浴びることもあまりない。しかし、こうした地道な改革が大学の足腰を強くしているのだろう。いうまでもないことだが、法人合併とは、事務組織も合併する。それがスムーズに進んでいるのも、こうした事務組織の改革が基底にあるのだ。2015年に竣工した8号館は、この教職協創をシンボルとして協創館(Center for Co-Creation)と命名された。周到な改革計画これで全てが片付いたわけではない。市川学長が考える主たる課題は2つある。1つは、修大附属鈴峯女子中学校・高等学校のブランド力の向上である。広島修道大学の安定的な定員充足の役割を持つ附属中等教育機関は、いわば学生の先取り機関である。いかにして質の高い生徒を引きつけるか、そのために大学への推薦枠をどのように設定するか、大学との連携による教育改革をどのように進めていくかは、喫緊の課題である。もう1つは、かなり以前からの、そしてかなり長期的視点にたったキャンパス・マスタープランの遂行である。1974年に現在のキャンパスに移転したため、全ての建物が一斉に老朽化の時期を迎える。2000年に、2009年から2035年までの4期に分けての「校舎等建替計画」が大学評議会において承認されていたが、実際にはその通りに進まなかった。耐震化基準の変更、監査法人からの2号基本金積立における問題の指摘などが、計画を阻んでいた。しかし、それでもって計画を取りやめるわけにはいかない。キャンパス環境の整備は、学生に対する教育の質にも直結するし、いわゆるブランド力にも影響を持つ。当初計画を練り直しつつ、長期計画をいかに遂行していくか、これが課題である。市川学長は、現代の大学を次のように見ておられる。「大学は、少子化時代の学生募集や卒業後の雇用など、いわば学生に関する変化だけを見ていては対応できない時代にあると言えるでしょう。大学の内外を取り巻く個々の現象を関連づけて総合的にみる視点が欠かせなくなっています。こうした変化に対応できるよう、絶えず改革を続けていかなくてはならないのです」。地域の雄として伝統を確立している大学でも、これだけの危機感に迫られ、それを受けて冷静に、かつ、改革の針路をとる。縮減する高等教育の時代の厳しさを教えられる。しかし、ここを乗り切り、卒業者の輩出による大学の地域社会への貢献が認知されれば、次世代の多くが広島修道大学を目指すという循環が生じるはずである。そのためにも、長期的な計画のもとに、常なる改革の継続を怠ってはならないのである。図表3 事務組織・組織風土の改革・ 学長・副学長・事務局長・人事課長で全職員とグループ面談を実施。・ 教職員(管理職)合宿研修をワークショップ形式で実施。「教育力アップセミナー」(若手教職員対象)を開催(毎年実施)。2010年・ 大学事務局長を理事とする。・ 第1回「修道力フォーラム<修道力>をいかに統合するか」(全学教職員研修)を開催(毎年実施)。2011年・ 大学運営会議は教員(学長、4副学長、5学部長、教学センター長)、職員(事務局長、総務部長、財務部長、学長室長、学生センター長、総合企画課長)から構成。2015年・ 職員部長の定年を60歳から62歳に延伸する。2016年2014年・ 事務局を2部(総務部・財務部)4課(総務課・人事課、財務課・経理課)体制にし、総務部長、財務部長を置く。2013年・ 各部をセンターと名称変更し、各センターに事務部長を置けるように規程改正。・ キャリアセンター長、学長室長に加え、学生センター長も職員が就任できるように規程改正。20162016特集 進学ブランド力調査

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