カレッジマネジメント200号
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76「つながりプロジェクト」をキャリア教育としては早めの2年次に置いたのには、園田学園女子大学の学部学科構成が関係している。「大学4学科それぞれに、国家資格の養成課程のカリキュラムですので、3年生以降は実習の連続で、学内にもなかなかいない状態。学部学科を横断するカリキュラムで、地域での体験ができるのは低年次しかない。それでも、養成課程の先生方には、学科横断の必修科目で学外での経験を積ませることの必要性をご理解頂くのに、若干苦労したかもしれません」(大江教授)。小さな困難を指摘しつつ、大江教授はこうも言う。「でも、こちらからお願いをしていくと、小さな大学ですので、教員間の風通しは非常にいいですね」。「つながり」「プロジェクト」「アセスメント」の3評価COC事業のもう1つの柱として、「経験値評価システム」がある。1つのシステムの中で、「つながり評価」「プロジェクト評価」「アセスメント」と3つの評価を出すことによって、経験値の可視化を意図している。1つ目の「つながり評価」は、学生の活動をデータベース化していく独自開発のポートフォリオで、活動場所を地図アプリにピンで打っていく。活動時間10時間ごとに1つずつ王冠がつくというゲーム的な要素も入れて、学生の地域活動の活性化を狙っている。2つ目が「プロジェクト評価」で、1年間のプロジェクト活動の記録で、カレンダーに活動時間が表示され、中間と年度末に振り返りを書き込む。グループでの授業外活動や、自主的な活動などの正課外の時間数を把握し、評価につなげる。3つ目が年に1回の「アセスメント」。127の項目について5段階で自己評価を行う。大きな指標は、「主体性」「コミュニケーション力」「気づく力」「協働する力」「考えぬく力」の5つ。特徴的なのは、「つながり評価」「プロジェクト評価」に、連携先の地域の方から評価やコメントをもらう仕組みにしていることだ。スマートフォンでQRコード®を読むと、コメントと星5つの評価の入力画面になる。「やりっぱなしではなく、地域のコメントを必ずもらう。星の数もけっこう厳しくつけられますし、辛口のコメントも頂く。怒るときにはしっかりと怒ってもらっています」(大江教授)。評価やコメントの手間をかけてもらえる関係性づくりに、地域連携推進機構が腐心する甲斐あって、書き込みの数は順調に増えているという。「学生自身も書き込むのに慣れてきて、どんどん書き込んでくれると、学生の活動が見えてきます。GPAなどとデータを掛け合わせると、地域で頑張った学生の成長度合いとか、国家試験合格率や就職率との相関とか、いろいろな分析ができるのではないかと思います」(大江教授)。地域に根付いた教育を今後の課題と方向性を考えるにあたり、川島学長が気にかけているのは「大学教育の遅効性」だ。「学生は、卒業してすぐには教育の効果を実感しないと思います。その効果が出るのは遅いですよね。本当に効果を感じるのは、3年後、5年後、あるいは30代に入る頃だと思います。それを踏まえて、今後大学時代に地域で学んだ厳しい経験、社会人として得た経験をしっかりと受け止めて、学び続けてほしいと思っています」。この観点では卒業生調査が有効だが、なかなかうまくいっていないのが課題だという。COC事業では、PBL型の「つながりプロジェクト」と、その導入科目である1年生(大学、短大共通)の選択科目「大学の社会貢献」の2つの科目だけが正課の地域志向科目になっている。大江教授は、今後の展開として、専門科目まで含めて4年間(短大は2年間)のプログラムの中で、経験値を高めていけるようにしたいと言う。それを受けて川島学長は、「学んだ学生が、地域にどれだけ根付いて、就職していくか」を次の課題にあげる。「地域に根付くことによって、地域が発展し、大学も一緒に発展できると思いますので。地域に根付いた教育を地道に継続していかなければならないと思います」。大学名が設立地の「園田村」に由来していることが示す通り、地域と共に歩む大学として誕生した園田学園女子大学にとって、〈地域〉と〈大学〉をつなぎ、〈地域で学ぶ〉と〈地域に根付いて働く〉をつなぐという方向性は、まさに建学の精神に立ち返るということでもあるのだろう。リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)
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