カレッジマネジメント200号
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9リクルート カレッジマネジメント200 / Sep. - Oct. 2016〜24歳人口になると急減します。そこをどのようにして食い止めるか、つまり学生の定着が、COC+における地域課題でもあります。従って、金沢大学は世界に展開する大学を目指す一方で、地域に必要な人材を輩出するという両方の責務を担っています。 その意味でブランディングは極めて重要だと思っています。今まではどこの国立大学にも工学部や教育学部があり、学制改革以来に設立された駅弁大学はどこも一緒だよね、と言われる金太郎アメ的状況でした。少しずつ違うものを創り出しながら、特色ある大学にすることが我々国立大学の学長に問われている課題だと考えています。併せて都会からも人が呼べる大学になりたいと考えています。金沢には京都ともまた違う文化的魅力がありますし、町の生活の中に文化が溶け込んでいるという点で特異であると思います。例えば昼間はうちの大学の事務や技術の職員として働いている人が、夜になると陶芸教室や加賀宝生流の先生をやっていたりします。そうした金沢の地域性や文化の特色、それにプラスした食文化を含めて大学に取り込んでいきたいと考えています。司会 北九州市も地域性もローカルとは言いながら、アジアと接している点グローバルの先端でもあり、人材育成は重要なテーマです。人口は増えないという課題に対してどのように取り組んでいますか。近藤 今年、本学は創立70周年を迎えますが、「北九州市立大学100年」という30年後を描いたビジョンを創りました。ちょうど29年前に私は北九州市立大学に赴任したのですが、このビジョンは、新しく入った先生方が30年後もこの大学で夢や希望を抱けるようにと考えたものです。このビジョン創りで意識したのが、人口減少という課題です。北九州市は現在人口96万人、10年後には80万人台になると言われています。実は海峡を隔てて同じ経済圏として学問的交流の深い山口県下関市も、同じような状況にあります。この課題に対して、地方創生の中で大学が取り組むべきことは、北九州市や下関市に残る学生を増やすこと、つまり、学生の地元への就職と定着の支援です。ポイントは、地元に残りたいという学生が3割程度いるのに、実際に地元企業に就職するのは2割程度に留まるということ。1割のミスマッチがあるのです。これは、学生が企業を含めて地域のことを知らないからではないか。また、大学もこの問題に対してこれまで取り組みが足りなかったのではないかと自問し、新たなアプローチの一つとして地域関連科目を開設しました。学生に地域のことを知ってもらうためです。一方、地元企業も8割以上が地元の大学生を採りたいと思っているのに採れない状況があります。こうした状況を変えるため、この4月から、COC+によって、大学・企業・行政が連携する取り組みが始まったのです。司会 地域・企業と大学は産学官連携と言いながら、個人の先生だけがつながっているような状況も多くあります。ドイツでは産業クラスターと大学がつながっていると聞きますが、日本はそこまで進んでいません。その理由は何でしょうか。吉武 一つは大学に対する地域の失望感がかなりあると思っています。地方創生を推進している方々は大学等教育機関に期待しており、大学も色々な形でやってはいますが、現実は個々の先生たちが一本釣りされてやっている等、点でしかつながっていない状況です。私は新日本製鐵の出身ですが、例えば製鉄所の総務部長として週に一度程度は市長と会っていましたし、土日も地域の行事に参加していました。それに対して大学は個々の教員の活動も大事ですが、職員も含めて地域に出て行くという感覚がまだ少ないと思います。今はまさに大学が組織的に地域に展開していくかどうかが試されていると考えるべきではないでしょうか。単に社会に迎合するのではなく、教育研究はどうあるべきなのか、大学が自ら発想することが重要。(吉武)

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