カレッジマネジメント201号
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28 学校教育法施行規則改正によって、2017年4月以降3つのポリシーの策定と公表が義務化される。これに伴い3つのポリシーを策定、もしくは見直しをしている大学は多いだろう。全学的な会議や研修を頻繁に開催しながら、教職員による熟議と協働作業のもとで3つのポリシーを策定している大学がある一方で、一部の教職員だけで策定作業を進めている大学や、民間業者に策定作業をアウトソーシングしている大学の事例も耳にする。本稿では、改めて何のために3つのポリシーを策定するのか、つまり策定の意義を考察したい。筆者は以下の3つの点からその意義を説明できると考えている。そのうえで策定にあたっての留意点を提案したい。社会への説明責任としての意義第一に、社会への説明責任としての意義である。これは、政府や外部評価団体が大学教育に質保証のインフラとして3つのポリシーの整備を求めていることから説明できよう。中央教育審議会「学士課程の構築に向けて」(2008)において必要性が強く提言されたことは記憶に新しいが、大学評価・学位授与機構や大学基準協会による評価基準でも、表現の違いはあれ、以前から3つのポリシーを明確に定めることが求められてきた。また、文部科学省の私立大学等総合支援事業調査票の項目(2015年度、タイプ1)においても、全学部・研究科における3つのポリシーの策定とホームページでの公表、履修系統図やナンバリングの導入によって高いポイントがつく。また、産業界がこの間、「社会人基礎力」や「グローバル人材」といった用語を使って示してきた汎用的能力のリストは、いわば「産業界発DP」とも言える。つまり、産業界は自社の新規採用者に対して、職務遂行にあたって必要な能力が不足もしくは欠如していると認識している。そのため、採用直前までの教育主体であった大学に対して「産業界発DP」を提示することで、各大学にDP策定時の参照基準とするよう要求しているのである。一方、大学のDPに対しては「我々が最も重要視したのは、大学/学部のポリシーであるが、具体的で分かりやすく、検証可能な形で開示している大学は、全体の1~2割しかなかった。多くの大学では、抽象的な表現を用いており、各大学でどのような人材が育つのかを具体的にイメージできるようなポリシーは見られなかった」(社団法人関西経済同友会大学改革委員会、2009)との指摘もある。このように、社会からの3つのポリシー策定要求に対して、大学は説明責任を果たすことが求められている。新たな教育・学習観への対応としての意義第二に、新たな教育・学習観への対応としての意義である。教育学においては1990年代半ば頃から、“From Teaching to Learning”というパラダイムシフトがあった(Barr&Tagg,1995)。つまり、これまでは「教員が何を教えたのか」が重視されてきたが、これからは「学生が何リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 2016FD・SD・ODとしての3つのポリシー策定の意義佐藤浩章 大阪大学 全学教育推進機構 教育学習支援部 准教授はじめに

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