カレッジマネジメント201号
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30リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 20163つのポリシー策定にあたっての留意点3つのポリシー策定の推進責任者は、具体的に以下の点に留意するとよいだろう。①3つのポリシー策定の意義を丁寧に説明する。②一部の教職員や部署のみで取り組みを進めず、全教職員・部署が関与して進める。③意味ある学習を保証するために、十分な時間的余裕のある作業スケジュールを組む。④全学としての統一感と各部局の多様性のバランスをどうするか事前に決め、リーダーシップを発揮して進める。①3つのポリシー策定の意義を丁寧に説明する。本取り組みを外発的な意義、つまり法令による義務化への対応であることのみを強調しないことである。そのように説明してしまうと、各部局の担当者は形式的に3つのポリシーを策定するようになる。また、学外からの評価を過剰に気にするようになる。内発的な意義をより強調して伝えるとよい。②一部の教職員や部署のみで取り組みを進めず、全教職員・部署が関与して進める。③意味ある学習を保証するために、十分な時間的余裕のある作業スケジュールを組む。これまで3つのポリシーを整備してこなかった大学は、一部の教職員で、短時間で策定をしようとしがちである。冒頭で述べたように民間業者にアウトソーシングする大学もある。このような動きは、せっかくのFD・SD・ODの機会を自ら手放していることになる。3つのポリシーをできる限り多くの教職員の参加のもとで作成していこうとすれば時間がかかる。筆者の前任校である愛媛大学では数年間かけて取り組んだ。策定と公表までの時期が迫っているため長く時間を取ることはできないだろうが、集中して熟議を重ね、納得のいく3つのポリシーを策定すべきだ。一時的に教職員に負荷がかかったとしても、それは意味ある投資である。カリキュラムのマネジメント手法を修得し、全学・部局の3つのポリシーをよく理解した教職員が増えることにより、長期的に大学のマネジメントは円滑化するだろう。④全学としての統一感と各部局の多様性のバランスをどうするか事前に決め、リーダーシップを発揮して進める。3つのポリシー策定にあたっては、中央教育審議会大学分科会大学部会からガイドラインが出されているものの(中央教育審議会、2016)、その記述スタイルに唯一の正解があるわけではない。そのため、書き方を巡っては、学内で様々な意見が出されるはずである。その際に、推進責任者が策定方針を明確にしておく必要がある。とりわけ、全学としての統一感を全面に出すのか、それとも各部局の個性や多様性を尊重するのかについて定めておくべきである。この点が不明確であると、作業が進行しなくなるし、部局からの不信感が高まってしまう。結果として、全学的な一体感が低下してしまう可能性もあるので、留意する必要がある。おわりに政府の財政状況の悪化や社会における大学のポジションの低下等の変化を考えると、今後大学に対する外部評価の潮流はますます強まっていくことが予想される。また、カリキュラムを評価するための、全国的・世界的なスタンダードが次々に示されていくだろう。このような基準が出る度に、各大学が振り回されるようなことは避けなければならない。大学が自律的な組織であり続けるためには、自ら育成すべき学生像を設定し(DP)、自ら育成する方法を設定し(CP)、それを公表したうえで、自ら評価軸を持って教育活動を行う必要がある。また自ら欲する学生像を設定し(AP)、適切な方法で入学者の選抜・受け入れを行う必要がある。3つのポリシーを策定し公表することは、決して外的な圧力に屈することではない。むしろ、外的な圧力から自らの価値を守るための取り組みを自ら行うことなのである。つのポリシーの具現化特集

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