カレッジマネジメント201号
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48リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 2016面の差があるなかで、企業の採用活動はどれほど参考になるというのか。《反論2》仮に採用活動を参考するにしても、具体的なイメージにまで結びつく情報を目にすることが少ないのだが、どうだろうか。「人材要件」や「人を見る目」が大事だという声は聞く。そしてその指摘は正しいのだろう。しかしそうだとしても、例えばどのような、そしてどれほどの人材要件を立てるのが、現実的なのだろうか。「人を見る目」というのは、どのようにしたら獲得することができるのか。かけた労力や用意した小道具の分だけ、正確な評価に近づけるような性質のものなのか。そもそも「見えにくいもの」を評価する営みに関して、抽象的レベルを超えた示唆というのは、どれほど抽出できるものなのか。大学入試センター研究開発部調査の紹介企業の経験を手掛かりにするにしても、まずは以上の反論にも答え得るような実態を描き出す必要がある。こうした考えから企画したのが、質問紙調査「現代日本企業の新卒(大学生・大学院生)採用面接に関する調査」(実施主体:大学入試センター研究開発部調査)である。対象は、ここ3年間に事務系総合職/技術系総合職の採用面接を担当したことがある企業関係者。株式会社インテージのモニターから該当者を抽出し、2015年12月〜2016年2月に調査をWEB上にて行った。回収数は、事務系採用面接担当者808、技術系採用面接担当者602である。新卒採用で起きていることを体系的に知りたいという目的から、様々な変数間の関係を考慮した枠組みをベースに調査を作成した。「企業の特性(A)」が「人材ニーズ(B)」を規定し、その「人材ニーズ(B)」と「採用倍率(C)」が「採用現場(D)」のありようを決める。そして、この「採用現場(D)」と「採用後の状況(E)」が「採用活動に対する意見(F)」を左右し、全般的に「回答者自身の経験と属性(G)」の影響も見逃せない。図式化すれば、図表2の通りになるが、以上で記した反論についても検討が可能な、幅広いデータセットになっている。さて、本連載の目的について言及すれば、この調査データを用いながら、「大学入試が企業の採用面接から学べること」について、今少し踏み込んだ示唆を実証的に示すことにほかならない。分析から組み立てられるストーリーは次回以降に詳しく示すが、調査データにどれほどの期待を寄せることができるのか、議論の導入として最後に触れておくことにしたい。データにみる「多様性」と「可能性」調査データの特徴として強調しておきたいのは、多様な企業関係者からの回答が得られたという点である。産業別に言えば、農・林・漁業0.6%、鉱業0.1%、建設業図表2 調査の枠組み具体的な質問項目(A)企業の特性産業、外資企業か、ベンチャーか、本社所在地域企業規模(全社員数)既存社員の特徴企業の特徴(業績や新事業への取り組み等)(B)人材ニーズ人材要件(要件の有無、数、内容)歓迎される人材のタイプ(C)採用倍率アプライしてきた者のどれほどを採用するのか(D)採用現場筆記試験ISPや独自の筆記試験実施の有無、用い方面接試験面接の回数、時間質問内容事前準備採点基準表(ルーブリック)の有無とその重要性他の面接担当者の状況(E)採用後の状況フィードバックの有無チューニングの有無(F)採用活動に対する意見結果の評価各学歴・層に対するイメージ各人材要件の見極めに対する意見大学教育への意見(G)回答者自身の経験と属性学校経験:出身学歴、大学時代の専門と学習態度採用面接経験・管理職経験

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