カレッジマネジメント201号
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50リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 2016今や耳慣れた感のある「高大接続改革」。2020年にはセンター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(以下学力評価テスト)の導入を控える中、どうしてもそちらに注目が集まりやすいが、個別大学の入学者選抜も進んでいる。高大接続改革自体が国の大きな指針であること、平成28年度国立大学第3期中期目標期間に向けた策定時期だったこともあり、個別入学者選抜に関しては国立が改革を先行し、昨年小誌ではこうした動きを「入学者選抜改革元年」と位置づけた。いずれの新入試もうたうのは「学力の3要素」の「多面的・総合的評価」である。言うは易いが、これまでの知識重視型試験では判定できない資質・能力やパフォーマンスをどう評価するのか、頭を悩ませる大学は多い。評価に多面性が求められる中、改めて「入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー)」、「教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)」、「卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)」を明確にし、「入学者に求められるスキル・コンピテンシー」を正しく評価できる入試手法や配点を構築していく必要がある。以前からこうした点を重視する入学者選抜を主軸に据えている大学もある。小誌でも以前取り上げたが、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに1990年設置された総合政策学部・環境情報学部では、学部コンセプトに共鳴し学習動機と資質・能力を見極める選抜方法としてAO入試が導入された。国際基督教大学は2015年より一般入試で総合教養ATLASを導入した。もともと入学後のリベラルアーツ教育にマッチングする人材を選抜するために「一般学力能力考査」「リベラルアーツ特性」等の適性試験が課されることで知られていたが、それをさらに磨き込んだかたちだ。神田外語大学ではセンター利用入試以外全入試で面接を実施しているが、それは大学として重視する「コミュニケーション能力」を測るために最適な選抜手段が面接であるからだという。こうした大学に共通しているのは、カリキュラム・ポリシーに足り得るスキルやコンピテンシーを見極め、その最適な評価手段を構築している点だ。知識の量という共通軸を前面に出せなくなった時、「何を=どんな能力を」「どうやって=評価方法」「どのくらい測るか=配点」を決めるのは難しい。だからこそそこに個性が生まれる。その大学は何を重視するのか、スタンスが分かりやすく表れるからだ。文部科学省では今年度「大学入学者選抜改革推進委託事業」が公募・選定された。各大学の入学者選抜において「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する評価がより重視されることになるよう、複数の大学等がコンソーシアムを組み、各分野・科目等に関する評価手法の開発に取り組むものだ。人文社会分野・理数分野等、評価を設計すべき主要科目を中心に5件が選定されており、横断的に議論が進むものと期待される。そうした動きも背景に、私立大学の改革が進んでいる。今年度導入すれば、新入試で入学した学生REPORT新大学入試の本格導入に向けて高大接続を担う入学者選抜改革の最前線

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