カレッジマネジメント201号
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53リクルート カレッジマネジメント201 / Nov. - Dec. 2016はし入試」。現状でも志願者全体の3割が地方から集まる同学で、意欲があり優秀でありながら経済的理由で同学に進学できない高校生向けに開設される、新たな入試だ。そうした目的に加え、「これからの時代を見据え、より多様な人材を受け入れる必要がある」と、これまでにない評価基準を打ち出した。課されるのは書類審査・講義ノート・小論文・ディスカッション・面接。問われるのは意欲・個性・学力・資質・論理的思考力・情報整理分析力・課題発見力・リーダーシップと多岐にわたる。高校までの学習成果や人物像を丁寧に見極めると同時に、大学での学びを社会につなげ活躍できる素養を、あらゆる角度から多角的に評価するのが目的だ。まさに高校と大学の「かけはし」、大学と社会の「かけはし」の両軸を担うものである。「ネーミングは、本学の創立者である新渡戸 稲造が帝国大学入試の際に『太平洋の橋になりたい』と発言したとされる逸話に因みました」と、入試設計責任者の篠崎晃一教授は語る。「本学の場合、あるレベルまでの基礎学力は大前提ですが、ペーパーテストのみで測れる能力は限定的なのもまた事実です。特に本学が志向するリーダーシップ等の要件は、なかなかペーパーでは測れない」。評価方法の1つである面接は推薦入試等でも実施しているが、「きちんと答えを準備してくる優等生が多く、逆に言うと人材の多様性が確保しづらい」ところ、知のかけはし入試では面接前に受けさせた講義に基づき、その場で思考しながら臨機応変に対応する能力も見るようにする等、人材要件に合わせたプロセスに変更したという。面接は導入する大学も多い一方、受験生が対策を講じるあまり、金太郎飴のように似たような人材ばかりになりやすいとの声も聞かれるが、前後のプロセスや「面接で明らかにしたいのは何か」を明確に規定することで、多面的評価の一端を担うものに進化させることができるようだ。こうした選抜方法の設計に際しては、まずワーキンググループで叩き台を作成し、運営委員会で検討したものを入試委員会に掛け、教授会で決議される流れをとった。検討開始から学内外への広報に至るまでは約4カ月と短い期間であったが、各専攻で取りまとめのハブとなる教員で委員会を構成する等、ガバナンス上も工夫して取り組んだという。アクティビティから総合力を見いだす(北陸大学)地方にもユニークな取り組みを行う大学がある。北陸大学では今年度から「21世紀型スキル育成AO入試」を開始した。考案者でもある山本啓一学長補佐によると、21世紀に必要とされる課題解決力とは2つに分けられる。1つは知識や情報を基に課題を発見し、仮説を立て解決策を考える力(リテラシー)。もう1つは、現場で協働しながら行動することで実際に課題を解決する力(コンピテンシー)だ。「リテラシーだけが強いと時に実践不足な評論家的思考に陥り、コンピテンシーだけが強いと理論不足の経験主義になりやすい。社会に出る前に両方をバランス良く育む必要があります。そのため、高校までに蓄積されたスキル特性と学部の目標人材がマッチする学生に入学してもらいたい」。今回入試を導入したのは2学部だが、経済経営学部は高校時代にスポーツ等を通じて行動力を培ってきた人材が、国際コミュニケーション学部では英語を中心に勉強する習慣のついている人材が多いという特徴があった。そのため、それぞれで評価方法を別に設計した。経済経営学部の入試はコンピテンシー評価が軸である。受験生は屋外体験学習「プロジェクト・アドベンチャー」にて、課題解決型アクティビティに6時間かけてチームで取り組み、教員による観察評価と面談で、主体性・協働性・課題解決力を3段階で評価する。自己評価もこれに加わるのが特徴だ。「コンピテンシー育成に大事なのは、観察評価ではなく、自己評価を促す仕組みです。入試時点がどうであれ、4年間通じて客観的な自己評価をできるようになることが目標で、入試をきっかけにそうしたスキルが大事と気づける学生が欲しい」と山本学長補佐は話す。一方国際コミュニケーション学部の入試は、リテラシーをグループワークで測る評価を用いている。課題に関した資料を読み込み、議論しながら自分なりの考えをまとめ、レポートにして教員と面談する。課題内容は「異文化や多言語を学ぶ意欲」を問うものであり、評価項目は、海外への関心度、思考力・判断力・表現力を3段階で評価する。こうした設計は高校からも評価が高い一方で、どの程REPORT

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