カレッジマネジメント202号
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11リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017の利用率が下がる傾向が見られる。40歳〜44歳では16.5%と、35歳〜39歳の14.2%より奨学金の利用率が若干高くなったものの、中退者の1割強程度にとどまっている。このように、中退者の年齢層の上昇に伴い奨学金の利用率が減少していく傾向は、折れ線グラフに示した「学生生活調査」による全国平均の傾向と同様である。しかし、いずれの年齢層においても中退者の奨学金利用率が全国平均を下回り、中退者の奨学金の利用率は比較的低い。奨学金は中退者の生活費の一部を補うが、受給者はアルバイトも多い中退者の学費と生活費の原資はどこから調達されたのか。図7のように、奨学金利用者は、学費の46.2%を保護者に出してもらい、42.9%が奨学金で支払われていた。生活費については、43.6%を保護者に出してもらい、25.0%が奨学金で、30.1%がアルバイト収入で支払われていた。一方奨学金を利用しなかった場合は、学費の92.5%と生活費の72.4%が保護者負担となっていた。このように、奨学金は中退者の学費と生活費の一部に充当され、家計負担の軽減につながると見られる。しかも、奨学金は生活費と比べて学費にあてる割合が高いことから、進学または修学継続における奨学金の役割が重要であると考えられる。図7のように、アルバイト収入は学費に充当するものではなく、生活費の収入源として使われている。しかも、奨学金を利用しなかった者グラフに示したように、全国平均における「5時間未満」の割合は41.1%と高いが、5時間以上アルバイトの割合はそれほど高くない。特に「30時間以上」アルバイトの割合は2.7%と極めて低い。このことは、全国平均より中退者のアルバイト時間のほうが長いことを意味している。さらに、奨学金を利用しなかった者と比べて奨学金利用者のほうが、「5時間〜10時間」(30.4%)と「30時間以上」(16.5%)でアルバイトの割合が高い。奨学金利用者は短時間だけでなく長時間のアルバイトにも従事していたと見られる。奨学金を利用した中退者は年収が低く、雇用が不安定図9のように18歳〜24歳の場合、奨学金を利用しなかった者の平均年収は193.8万円で奨学金利用者の(26.7%)と比べて奨学金利用者(30.1%)のほうが、よりアルバイト収入で生活費を支払う傾向があった。奨学金利用者が、保護者からの支援がないために、奨学金に加えてアルバイトをしなければ生活費を賄えなかったことが読み取れる。また、中退者の一週間あたりのアルバイト時間数については、図8の棒グラフにあるように、「5時間未満」の割合は低いが、5時間以上の割合が高い。しかも、20時間以上アルバイトの割合は中退者の3割以上(奨学金利用者では「20時間〜30時間」(16.5%)と「30時間以上」(16.5%)の合計、奨学金を利用しなかった者では「20時間〜30時間」(24.3%)と「30時間以上」(15.5%)の合計)にも達した。これは日本学生支援機構「学生生活調査」の全国平均と違う傾向となっている。つまり、図8の折れ線01020304050%※出典:日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」5時間未満5時間~10時間10時間~20時間20時間~30時間30時間以上41.131.59.27.87.830.420.731.716.524.316.515.528.72.714.7奨学金を利用した奨学金を利用しなかった学生生活調査の平均※特集 中退予防の処方箋図 8 一週間あたりアルバイト時間数の割合(単位:%)

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