カレッジマネジメント202号
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14リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017いずれにせよ、表層的な支援を整備する前に、そうした真の要因を突き止めることが何よりも求められる。そのうえで、経済的要因は心理的な要因に比べて、大学が対応することが比較的可能であり、経済的な支援は効果があるということを強調したい。本調査で明らかになった経済的理由による休学や中退の防止のための課題は、以下の通りである。(1)大学によって、休学や中退や除籍に対する対応には大きな差がある。特に大学は中退と除籍の定義を明確にする必要がある。また、大学によって休学中の授業料の扱いや授業料未納の場合に除籍に到るプロセスにも差が見られる。こうしたことは学生や学外にはほとんど周知されていない。社会的な混乱を招く恐れがあり、大学は休学や中退や除籍の防止に向けた対応を学生や保護者に示すことも必要である。(2)経済的理由による休学や中退や除籍には、その他の複合的な要因が絡む。この点に留意して、単なる経済的支援だけでなく総合的な視点から対応を検討するべきである。この点で、かなりの大学や専門学校が実施している、個々の学生に対する担任制(教員の場合が多い)は、学生の困難性を包括的に捉えることができ、有効な対応策と考えられる。しかし日本の大学の多くは、経済的な支援は学生部や厚生課等の担当だが、メンタル面のケアは学生相談所等の担当であるというように、縦割りとなっている場合が多い。このような場合には、上で述べたような休学や中退に至る経路を把握することが難しい。これに対して、関連する部署が相互に緊密な連携を取ることが求められる。例えば、学生の状況を把握するために、履修状況や授業料納付状況や学生生活等の学生の記録を共有することができるようにすることが考えられる。これはIR(Institutional Research)の重要な役割であり、こうした観点からも大学がIRを積極的に推進していくことが望ましい。特に、学生の入学前から在学中、そして卒業後まで一貫して把握し、ケアするエンロールメント・マネジメントとして捉えることも重要である。いずれにせよ、学生の状況をトータルに捉え、対応することが必要である。(3)日本学生支援機構奨学金を主とする現在の経済支援は、多くの学生、特に経済困難な学生に教育機会を与え、学費や生活費の一部を補っている。しかし、貸与奨学金のみで休学や中退防止に十分効果があるとは言えない。さらに、奨学金を利用していた中退者のほうがアルバイトが多く、中退後も厳しい状況にあることも明らかにされたことは、貸与奨学金の問題を示している。とりわけ、家計急変に対しては、現在の日本学生支援機構奨学金は十分とは言いがたい。必要性が生じた場合に申請したとしても、実際に支給されるまでタイムラグがある。また、支援額も第1種・第2種とも月額相当に留まっており、授業料の支払い等には十分ではない。ただ遡って支給されるため、例えば、6月に申請すると4月から3カ月分が支給される等、一定のまとまった金額になる場合もあるが、これも申請時のタイミングによる。家計急変はいつ生じるかわからないため、これに対応した支援制度が望まれる。(4)これに対して、家計急変に対応するための授業料減免や大学独自奨学金制度を有する大学は約半数に留まる。現在創設が検討されている給付型奨学金は低所得層に対する高校在学時の予約型である。今後は、授業料減免や給付型奨学金等の効果的な経済支援の充実が休学・中退の有力な防止策として期待されるが、特に今後高等教育機関在学時の給付型奨学金の創設について、検討する必要があろう。(5)高校や大学では、学生や保護者に学生への経済的支援制度について、十分な説明と情報提供を行う必要がある。また、在学中のファイナンシャル・プランを予め明確にしておくために、ガイダンスやカウンセリングも求められる。とりわけ、新しい所得連動型奨学金返還制度は、従来の定額制と選択制になったため、学生や保護者に選択を支援することが必要である。その他、大学が用意している学生への経済的支援制度についても、休学や中退に至る前に学生や保護者に十分情報が伝わるように努めることが肝要である。特集 中退予防の処方箋

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