カレッジマネジメント202号
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22近年、大学教育の質保証に関して、英語圏を中心にstudent engagementという概念や実践について議論が進んでいる。従事・参加・約束・契約等、多様な日本語訳が当てられるengagementだが、適訳を探すのはなかなかに難しい。そもそも英語のstudent engagement自体、意味する内容が多様で、普遍的に合意できる定義がないという。ただ、恐らくこの言葉が示唆するのは、学生が大学における教育や学習にengageすること、つまり、学生が課外活動を含めた教育や学習と深く結びつき、大学への参加意識や所属意識を培うことの大切さだ。大学生活における「成功」に学生を導くのがstudent engagementの考え方だ。日本に目を転じれば、今中退予防の取り組みが各地の大学で始まっている。中退につながる要因は様々で、その分処方箋も多様だ。学習面・精神面・経済面等、それぞれに異なる課題を抱えた学生をいかに発見し支援するのか。きめ細かな対応が求められる。ただ、突き詰めればこの問題は、学生が大学への所属意識を持てるよう大学としてどう支援するかという課題に帰着する。つまり、中退予防の対策やそこから得られた経験や知恵は、学生全体の経験を豊かにするための知見をもたらしてくれる可能性が高い。そのためにわれわれは多くの試行錯誤から学び、student engagementの向上につなげていくことが必要だ。そこで本稿では、中退防止の取り組み事例として東北福祉大学(以下、福祉大)に目を向けたい。福祉大は今年新たに「中退防止対策会議」を立ち上げ、中退予防に力を入れ始めた。その背景にはどんな事情があったのか。さらにどんな課題が見えてきているのか。学生生活支援センター長の梶原洋教授と学生生活支援課の大野光吉課長にお話を伺った。学生の志を通貫させるための多様な学生支援体制福祉大は創立以来「行学一如」を建学の精神に掲げ、学問研究と実践実行の融合を目指してきた大学だ。名称に「福祉」を掲げる大学として、人類の福祉(幸福)を実現するための理論と実践を追究すべく、現在は総合福祉学部・総合マネジメント学部・教育学部・健康科学部の4学部9学科で構成されている(通信制や大学院を含む学生数:約9600名)。それらに通底する教育理念は「自利・利他円満」だ。大谷哲夫学長は、学長挨拶の中で「自らが生きることは、即ち他を生かし自らが生きること」、「自らの『利福』は同時に他人の『利福』」と説明する(東北福祉大学サイト)。リクルート カレッジマネジメント202 / Jan. - Feb. 2017学生情報の共有と手厚い初年次教育で育む学生支援の輪梶原 洋学生生活支援センター長大野光吉 学生生活支援課 課長東北福祉大学C A S E2

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